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* 秘伝のレシピ *




「らう〜、るふぃーり、これ、つくる!」

 

「なんだこりゃ!? チョコレート? おいおい、こんなのお前に作れるわけ……」

 呆れるラウルをよそに、両手いっぱい材料を抱えて台所へ向かう少女

 やがて聞こえてくる、数々の「悲鳴」――

「ゆせん、なに?」
 ガシャーンッ! ゴトンッ!
 カタカタカタ……カッ
「あう、てぇ、きったぁ」



「ああもう!」

 堪りかねて台所に飛び込めば、目を覆いたくなるような惨憺たる状況
頭を抱えつつ、まずはお片付け

「ったくもう……ほら、作るぞ!」

「らうっ!」

手を洗い、袖をまくり、前掛けをつけて、いざ開始!

「まずはなんだって? チョコレートを削って……?」
「んー、おいしっ!」
「これそこ、つまみぐいすんなっ!」



「らう、これまぜていい?」
「あー、待てまて。何なに、湯煎したら次は氷水を張った器に入れて……、おいこら温度計持ってくな!」

 つやつやのチョコレートを型に流し込んだら、雪の残る裏庭へと移動
 雪を掘って作った即席氷室でしばらく冷やせば、ぴかぴかハートの出来上がり



「で、次は……?」
「だめっ、あとはるふぃーり、やるの! らう、あっちいってて!」
「って、おい、一人で大丈……いて、押すなって!」

 居間に追い出されて、ふてくされ顔のラウル


 待つこと、半刻――


「できたぁっ!」


 笑顔全開、台所から飛び出す少女


「はい、らう!」



「……なんだよ、これは」
「あけて!」









「…………」
「あのね、きょうはばれんたいんでー、なんだって! だいすきなひとに、ちょこあげるひ」
「……ほぅ……」
「だから、らうにあげる! ぎりちょこ!」
「……義理……」

間違っていないんだが
なんだかムカつく……

「あれぇ? るふぃーり、まちがえた?」

おずおずと差し出された、一枚のレシピ

簡単おいしいバレンタインチョコの作り方

i. まずはチョコレートを細かく刻み……

(中略)


大好きな人への思いを込めて「義理」と書くべし。



「……誰だこのレシピ書いた奴はっ!!」

ぐしゃ。

「らう、るふぃーり、まちがえた?」
「……いや、お前は間違えてない。間違えてるのはこれを書いた奴だ! それともなんだ、確信犯か!?」

『くすくす』

……忍び笑いが聞こえたのは、気のせいか……?

「ごめんなさぁい」

しゅんとなる少女の頭をくしゃりと撫でて、照れくさそうに一言

「ありがとな」

弾ける笑顔 溢れる光

「らうっ!」
「ぅわ、光るなっ、飛ぶなっ、抱きつくなっ!」


気を取り直して。


「それ、たべよ!」
「……お前、自分も食う気で作ったな?」
「うんっ」

「じゃ、半分こな」



「おいしっ! るふぃーり、てんさい〜♪」
「あのなあ、作ったのはほとんど俺だろうが!」


小さな幸せと不幸せ
あどけない笑顔と、朗らかな笑い声
何気ない日々の、ほんの一コマ













 バレンタイン小ネタ。 ちなみに、この世界にはバレンタインデーも義理チョコもありません。念のため(笑)

 バレンタイン本命チョコ投票期間中、web拍手にて「チョコと聞いて「ラウル君の手作り教室」が浮かんで頭から離れません」というコメントを頂き、思わず想像が膨らんでこういう話になりました(^^ゞ
 イラストが鉛筆書き&色鉛筆塗りなので、見づらくってごめんなさいm(__)m

 さてここで問題。
 ルフィーリに材料&レシピを渡し、見事ラウルを凹ませた人物は誰でしょう?

1.村長

2.エリナ

3.seeds 4.料理好きの某魔術師

 正解者にはルフィーリ特製ハートチョコをプレゼント、って冗談ですから(笑) 選択肢からしてすでにおかしいですから(笑) ジョークですから許してTさん(爆)(平伏)

初出 2005.02.14



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