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* ケーキ *




うっかり口を滑らせたのがまずかった

「えー!? ラウルさんの誕生日、五の月だったの?」

「もお、何で言ってくれないんですかー!」
「とっくの昔に過ぎちゃったじゃないのっ」
「こうしちゃいられないわ、ほらあんた達、村の人達呼んできて!」
「あたしお父さんに言って来る!」
「お、おれ苺探してくるっ」
「わたし、お花摘んできますっ」
「はいラウルさん、ここ座って!」

呆れ顔でまくしたてられ、口を挟む間も与えられず
気づけば目の前に、特大のケーキ

「急ごしらえだから見てくれは悪いけど、味は保証するわ」
「ろうそくは二十六本だよね。ちゃんと数えた?」
「ちゃーんとかぞえたもん!」

次々と灯されていく火は
集った彼らの笑顔に似て

眩しさに目を細めれば
人々の笑顔が、不思議と滲んだ












 誕生日近辺はバタバタしていて言い出す暇もなかったと思われ(^^ゞ
 あまりにも当然のように祝ってくれた村人達に、思わず涙、なラウルの図でございました。
 ケーキがそんなに早く焼きあがるわけないじゃん、という突っ込みはなしの方向で(^_^;) きっと当日のおやつ用に焼いていた生地を急遽、誕生ケーキに仕立て上げたのでしょう。

初出 2006.05.19



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