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* 冷たい氷 *



北に名高き峻峰に
響き渡るはアイシャスの
冷たく甘い 笑い声

女神のおわす 宮殿は
清き氷に包まれて
夏の盛りになお白く
照り輝いて 聳え立つ

「……で、これが?」
「そう! アイシャスの宮殿があるとされる峻険イル・ファーレの頂上で採取した処女雪よ!」
「世界一純度が高いと言われておりますの〜」
「ほお……ただ一杯のカキ氷のために、わざわざ取りにいった、と?」
「美食を追求して何が悪いのよっ」
「悪いとは言ってないぞ。ただ、暇人だなあと思っただけで」
「なぁんですってぇ!!」

「思ったんですけど、純度を求めるなら魔法で氷を作った方が早いんじゃ……?」
「だって、それじゃ風情がないでしょう?」
「そ、そういうもんか……?」
「魔術士の考えてることはよく分からん……」
「美味しいから、いい」
「よく分かってるじゃないの、精霊使いの小娘! さあもう一杯どう?」

「……で、アイシャスの宮殿はあったのかな?」
「さあ?」







  夏といえばカキ氷! 北の地ではそこまで暑くならない気もするのですが、まあそこはご愛嬌ということで。
 最初は「魔法で氷を作ってカキ氷を食す魔女姉妹」を書こうと思ったのですが、文中にもあるとおり「風情がない」気がして、こんな話に。まあ、これに風情があるかどうかはともかくとして(笑) わざわざ魔術で山の上まで飛んでいって雪を掻き集め、魔法の保冷容器に入れてエストまで飛んでくるアルとユラの根性には頭が下がります(笑)
 余談ですが、カキ氷にかける各種シロップはユラ謹製。塔の実験室でいそいそとシロップを煮詰める姿がいかにも『怪しげな魔法の薬を調合中』に見えて、うっかりそれを目撃した見習い魔術士が悲鳴を上げていたとかいないとか(笑)
2006.08.15



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