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* ほうき *





遠く連なる氷の峰も
砂漠の果ての熱砂の国も
美姫の眠る白亜の塔へだって
空飛ぶほうきで ひとっとび



『てやんでぃべらぼうめ、なんでおれっちがおめぇみたいな青二才を乗せて飛ばなきゃならねえんでぃ』
仕方ねえだろ、オレだってこんな頑固親父みたいなほうきに乗りたかねえや

「明日の朝までに、この金冠鳥をお城の姫様まで届けてちょうだい」

なんて命令をおししょーサマに言いつけられてなきゃ
今頃、滅多にありつけないユラ師の手料理に舌鼓を打ってたはずなのに
ちくしょー、あのチビ、オレに恨みでもあるんじゃねえのか
弟子だなんていって、ちっとも魔法教えてくれねーし
ぶつぶつぶつ……

『なんでい、それを早く言わねえかボケが。ほらとっとと行くぞぃ!』
おお? なんだよ急にやる気になって
『ばっかやろう、城の姫様に会えるなんて滅多にない機会じゃねえか!』
ま、そりゃそーだけどよ
ほらオレってば一応、貴族の末子だからさー 姫様にも会ったことあるわけ
深窓の姫君 白亜の姫なんて言われてるけど
……大したことないぜ?
『朝までにってこたあ、寝室にお邪魔できる格好の機会だぜぃ?』
……あー、そりゃちょっと嬉しいかも

よし、そうと決まればとっとと行くか
『おうっ! 早く乗れってんだ!』

意気揚々とほうきにまたがれば
鳥籠の中で金冠鳥がくえー、と鳴いた



『朝マデニッテコタア、寝室ニオ邪魔デキル格好ノ機会ダゼィ?』
『アー、ソリャチョット嬉シイカモ』

「ほう。で、深窓の姫君の寝室にお邪魔した感想はどうかな。ほうき君に見習い魔術士君」
決済書類と古書に埋もれた寝室で
金の小鳥を肩に乗せ
にやりと笑う白亜の姫
『い、いえそのなんていうか……すいやせんでした……』

……金冠鳥のバカ……






 もっと夢のあるアイテムのはずが、何故あんな伝法なほうきになってしまったのか(笑)
 そして金冠鳥、設定としてはただの鳥ではなく幻獣の一種で、周囲の会話を(勝手に)記憶して再現してくれる不思議な鳥、という感じです。訓練すれば合言葉とともに記憶開始、再現開始が出来るんですが、多分訓練前で気が向くと(笑) 色々記憶したり再現してりしてくれる模様(^_^;)  これから塔の姫様が特訓するんでしょうね(笑)
 ちなみに姫様は病に伏した父王に代わり国事を取り仕切る才女。切れ長な瞳に眼鏡がお似合いな25歳です(^^ゞ

初出 2006.?.?



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