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* 霊薬 *




覗いちゃ駄目だよ 魔女の部屋
山積み書物に 謎の石
机の上で光るのは 埃まみれの水晶球

触っちゃ駄目だよ 魔女の部屋
空の鳥かご 魔法陣
棚の上には赤・青・紫
色とりどりの硝子瓶



扉を開けた途端、ぶわっと舞い散る塵芥
目の前に広がるのは、まさに『混沌』
噂に聞いてはいたけど、ここまでヒドいとは
今まで立ち入りを禁じられていたのは、こういうわけかい

この『混沌』の中から
小さな霊薬の瓶を探してこいだなんて
砂漠に落とした針を拾ってこいと言われてるに等しい

『部屋を引っ掻き回すんじゃないわよ。何がどこにあるのか分からなくなっちゃうから』
なーんて言ってたおししょーサマだけど
この『混沌』をマジに把握しているんだとしたら
本気で尊敬してもいいかも

一歩踏み出せば巻物が転げ落ち
ちょっと手を伸ばせば護符が舞い
くしゃみをした途端 書類が雪崩れ
照明は見つからないし 窓は謎の地図で塞がれてるし
ふと振り返れば扉までの道は崩れた書物で塞がれてて
オレってば、生きてこの部屋出られんのかな?

そんな『混沌』を彷徨うこと、一刻余り
やっとこさ見つけた、お目当ての薬品棚
ずらっと並んだ 見るからに怪しげな霊薬の数々は
えーっとなになに? 『毛生え薬』『滋養強壮』『笑い茸抽出液』『仮死毒』『性転換』『媚薬』……?
……で、言いつけられたのはナンだっけ?
確か、『紫と緑の二層に分かれた霊薬の瓶』だったかな
紫と緑っつーと……これか
『大人になる薬』
大人になる……薬?
まじで?
まじ?
えーっと……

『ぐびぐび』


んぎゃー
ふぎゃー

「……遅いと思ったら、なにアホなことやってんのかしらねえ、この子は」
んぎゃー
「あらあら、ハル君ったら可愛くなってしまって〜。よしよし、いいこでちゅね〜」
うきゃきゃっ
「勝手に飲むからそういうことになるのよ。馬鹿ねえ」
「あら、でもアルが言いつけたのは成長促進の霊薬でしょう?」
「二層になってるのよ、若返りと成長促進と。混ぜて飲むと、ちょうど青年期の姿になるの」
「ではハル君は混ぜないで飲んでしまったんですのね〜」
「ばっかねえ、赤ん坊まで戻っちゃって」
ふええっ
「あらあらハル君、泣かないで〜。よしよし」
「ふん、いい気味だわっ! 薬の効果が切れるまでそうしてなさい!」
「持続時間はどのくらいですの?」
「せいぜい二刻ってとこね」
んぎゃー!!






 霊薬、つまり魔法の薬ですね。ファンタジーには様々な霊薬が登場しますが、やはりポピュラーなのは体力回復の霊薬でしょうか(^^ゞ
 霊薬を飲んで赤ん坊になってしまった彼の面倒は姉妹がしていた模様(笑) そして後々までからかわれるんだろうなあ(^^ゞ
 ちなみに、個人的に欲しいのは背が伸びる霊薬です(^^ゞ

初出 2007.06.19



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