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Pale Blue Dot

『地球産の宝石、その希少な輝きを貴方の元へ――』
 ジュエリーショップからのダイレクトメールをゴミ箱へ放り込み、やれやれと肩をすくめる。
「本物なら博物館行きだろうに」
 地球が凍結して幾星霜。氷河期到来前に持ち出された宝石類もあるにはあるが、それこそ値段などつけられるはずもない。
『地球産ダロウガ、合成宝石ダロウガ、硝子玉ダロウガ、綺麗ナラ何デモイイダロ! ドウセ見分ケナナンカツカネエンダカラ』
 身も蓋もないことを言ってのける鳥型AIの言葉に、それもそうだなと、苦笑いを一つ。
「そりゃそーだ。綺麗ならどこ産だろうが関係ねえな」
 地球産に価値を求めるのは、すでに時代遅れだ。今や宇宙のあちこちで鉱石が発掘される時代。地球上にはなかった未知の鉱石も山のように発見されている。
「地球産の宝石には興味ないが――『宝石のようだった』地球なら、この目で見てみたかったよなあ」
 生命力に満ち溢れた神秘の惑星(ほし)――。凍結した今の姿からは想像できないが、かつて母なる星は青く、見るものすべてを魅了する星だったという。
「淡く輝く青い星、か。いつかまた、見られる日が来るのかね」
『詩人メイタコトヲ言ッテネエデ、サッサトめーる整理ヲ終ワラセロ!』
 感慨に浸る間もなくAIに小突かれて、はいはいと作業に戻る。

 地球が色彩を取り戻す日は、明日か、それとも百年先か――そればかりは誰にも分からない。」



Novelber 2020」 20 地球産



 twitter上で行われていた「novelber」という企画に参加させていただいた作品。テーマは「地球産」。
 この時代にもまだダイレクトメールがあるのかよ……というツッコミは…甘んじて受けますが、多分廃れないよ……。

(初出:Novelber 2020/2021.03.16)
2021.04.27

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