『だから、庭で作った枝豆が思いのほか豊作だったからね、お裾分けよ』
いつの間にか家庭菜園にハマったらしい母親から
段ボール一杯の枝豆が送られてきたのは昨日のこと
「わー、すごいすごい、枝豆ってこうやってなってるんだね」
初めて土つき野菜を触ったケイさんは大はしゃぎ
「スーパーでもこの状態で売られてますよ」
「えー、そうなの? 私、枝についてる状態の見たの初めてだよ」
「鞘を枝から外しちゃうとすぐに鮮度が落ちるんですよ」
ぶちぶちと鞘をもぎ取って
少量の水で蒸かすように茹で上げれば
つやつや枝豆の出来上がり
「うーん、やっぱり夏は枝豆にビールだよね!」
いそいそと缶ビールを出してくるケイさんは
こういう時だけ実に用意がいいけれど
「俺達、未成年でしょうが」
「私、成人してるもーん」
「え……?」
「あれ、言ってなかったっけ?」
「聞いてないです」
「わたし、帰国子女なんだよ~」
卒業時期がずれる帰国子女のほとんどは
特別な制度で学期途中から入学するものらしいが
ケイさんはそれを知らなかったんだとか
「ねえ、知ってる? イギリスにはビール酵母を使ったペーストがあってね~」
のほほんと語るケイさんが
意外と苦労人だったことが分かって
ちょっとびっくりした 夏の夕暮れ
「じゃ、改めてお疲れ様ー」
「お疲れ様です」
ビールとサイダーで乾杯すれば
遠くで花火の音がした