キャンドルナイトって知ってる? という言葉から、この惨状を想像できなかった自分の愚かさを、今ほど悔やんだことはない。
「見てみて、めぐみクン! すっごく綺麗でしょ!」
バイトから帰宅したアパートの、窓の明かりが消えていた時点で嫌な予感はしていた。
ドアを開けた瞬間、目に飛び込んできたのは、部屋を埋め尽くすアロマキャンドル――。
ああ、確かに幻想的だ。小さな炎があちこちで揺らめいて、まるで別世界のようにさえ感じる。
蝋燭の明かりでも、これだけあれば割と明るいものだ、というのは大発見だが。だが――!
「ケイさん。これ、火事になる前に全部、ちゃんと消してくださいよ」
「うっ」
使うあてもないのに買い貯めていたアロマキャンドルは、確か三十個近くあったはずだ。そして、それは部屋のあちこちで揺らめいている炎の数とほぼ一致する。
広くて物の置いていない家でやるならともかく、この部屋にはケイさんの私物があちこちに積まれていて、それらはほとんど可燃性だ。
「ヤダナー、ちゃんと消すってば。でももうちょっと」
「今すぐ消す!」
「ハーイ」