卵黄と砂糖、牛乳を小鍋に入れ、掻き混ぜながら弱火で温める。
沸騰させてはいけないから、よそ見をせずに木べらを動かす。
ブランデーを入れて軽く混ぜたら、ぼってりしたマグカップに注ぎ入れ。
最後にシナモンとナツメグを振れば、完成だ。
「子供の頃、憧れてたんだよね」
猫舌のケイさんは、作りたてのエッグノッグにすぐ口をつけず、マグカップを両手で包み込んで、カイロ代わりにしている。
「お母さんに頼んでも、お酒が入ってるから駄目って言われてさ」
「そりゃそうでしょうね」
そもそも日本ではあまり馴染みのない飲み物だ。アイスでも美味しいが、本場の味を楽しみたいなら、寒い日にマグカップをふうふう吹きながら飲むに限る。
「スパイスもきつめだから、慣れてない子供にはハードル高いでしょうし」
いきなり絵本を持ってきて「これ作って!」と言ってきたのにはびっくりしたが、家にある材料だけで作れる手軽さはありがたい。製菓用に買ったはいいものの、消費しきれず放置されていたブランデーやシナモンも、きっと喜んでいることだろう。
「うーん、王侯貴族の味だね」
ようやく冷めたエッグノッグを一口すすり、満足げに呟くケイさん。
「……次からは、お酒とスパイス抜きが良いかなあ」
言うと思った。彼女が酒や香辛料の類をあまり得意としていないからこそ、それらはキッチンの片隅で悲しく埃を被っているのだ。
「……それだとただのホットミルクセーキですが」
「ミルクセーキ! 懐かしい響きだね」
それはそれで美味しいじゃない、と言ってくる無邪気な笑顔に、やれやれと肩をすくめる。
「じゃあ、クリスマスはホットミルクセーキで乾杯ですね」
「やったー!」