「まいどー、キジトラ急便でーす」
「はいどうも……あれ」
土曜日の真昼間に届いた、やたら縦長の段ボール箱には
『佐藤ケイちゃん』
と書かれた伝票の下
わざわざ赤マジックの直書きで
『めぐむは開けちゃダメ!』
明らかにうちの母親の字だが
これは何の企みだろう……
* * *
『ああ、それならうちにあるわよー?』
めぐみクンのお母さんの言葉は
まさに天の恵みだね!
『もううちじゃ使わないし、近々送るわね♪』
やったあ、お母さん大好き☆
あ、でもでも、めぐみクンにばれたら大目玉食らいそうだから
内緒にしておかないと
『それなら大丈夫! 品名は『パソコン部品』にしておくから』
うんうん、それなら大丈夫だね♪
* * *
「で。この巨大な『パソコン部品』は一体ナニモノですか」
「うーんと、えーっと、ベアボーンキット?」
「どんだけでかいベアボーンですか。余りにも怪しすぎる。中を検めさせてもらいます」
「わーん、ひどいよめぐみクン!」
べりべりべり
「……ツリーだ」
「ツリーだ♪」
それは、幼い頃に実家のリビングの一角を占領していた
高さ1mほどのクリスマスツリー
古めかしい電飾と、なんだか灰色っぽくなった綿の雪が
しまい込まれていた月日を物語る
「ずーっと欲しかったんだけど、結構お高いじゃない?」
「これを、ここに飾るんですか」
「だってクリスマスにはツリーが必要だよ!」
断言されてしまっては
反論のしようがありません
「でね、プレゼントをこのツリーの下に置いておいて、クリスマスの朝に開けるの!」
「靴下の中じゃないんだ」
「だって靴下じゃ入らないじゃない!」
「どんだけでかいもんを頼むつもりですか」
というか、大学生にサンタは来ないんじゃ……?
「というわけで、プレゼントは1000円以内ね♪」
「そうきたか……」
ま、そのくらいならつきあいましょう
さて、1000円以内で相手をぎょっとさせるプレゼントはないもんか……