[series top] [HOME]

戴冠式
 彼女が選んだのは、純白のドレス。
「私は国家と結婚するのだ。ならば白こそ、最も相応しい色だろう?」
 雪深き北の小国。病に伏した父の後を継ぎ、天鵞絨の王座に就くことになった姫は、女官達を前に紅唇を引き上げる。
「姫様の花嫁姿を見るのが夢だったとはいえ、これは些か不本意でございます」
 わざとらしく泣き言を漏らす乳母に肩をすくめたところで、扉が開く音がした。
「ああ、ジーナ。間に合ってよかった」
 息せき切って現れた庭師の手には、冬咲きの薔薇。
 急なことで冠も装身具も間に合わなかった。秘密の庭に咲いた最後の一輪。その赤だけが、彼女を彩る。
「――姫様。お時間です」
「分かった。今行く」
 白亜の姫は今宵、氷雪の女王となる。
 こちらは第8回 Text-Revolutions内有志企画「300字SSポストカードラリー」参加作品。
 七回目となる今回のお題は「雪」でした。
 若くしてライラ国を治める《氷雪の女王》ことライラ・ロジーナ。その戴冠式直前の様子です。
 今回は内容に合わせて、どうしてもきらきらの紙が使いたくて、いつもと違う印刷所さんで刷っていただきました。(「スノーエッセンス CoCキラ」という、パールのようなキラキラした紙です)
 その分、いつもよりぐんと小部数での印刷になったので、ほとんどテキレボ8当日にもらわれていきました。ありがとうございます!
 今回は裏面にどうしても薔薇の写真が使いたくて、恒例の裏面SSはありません。
2019.04.19



[series top] [HOME]