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純白のドレス
 お姫様は純白の花嫁衣装を着て、愛しい王子様のもとに嫁ぎ、二人は末永く幸せに暮らしたのでした。めでたしめでたし。

 そんな童話の結末をこよなく愛していた彼女――世継ぎの姫ライラ・ロジーナが戴冠式のために選んだのは、まさにその『純白のドレス』だった。
「私は国家と結婚するのだ」
 そう公言して憚らない彼女だ、ある意味『有言実行』なのかもしれないが、これを好機とばかりにリボンやレース、ビーズなどをふんだんにあしらい、絢爛豪華な衣装に仕上げたのは、いかにもばあやさんらしい。
「おかしいな。白なら質素になると思ったのに」
 案の定、彼女はドレスの仕上がりに驚きを隠せないでいる。こればかりは、ばあやさんの執念を計算に入れなかった彼女の失策だ。
「これは想定外だったな。どう思う、テオ?」
 そう問われて、思わず言葉を失う。
 なんと答えたら、彼女は納得するだろうか。
「率直に言ってくれ。お前の言葉なら何だって、私は受け止める」
 なんとも頼もしい言葉とは裏腹に、その表情はどこか不安そうで。
 初めて出会ったあの日、父王のマントに隠れてこちらを窺っていた時と、何一つ変わらないその様子に、ほっと肩の力が抜けた。

「とても似合うよ、ジーナ」

 それが、たとえ手の届くものでないとしても。
 ――いいや、手が届かないからこそ、それはきっと美しくて。
 だからこそ僕は心から言えるのだ。

「まるで氷の女神様みたいだ」
「それは褒めてるのか?」
「最大限に褒めてるんだってば」
Novelber 2019」 30 真っ白い
 twitter上で行われていた「novelber」という企画に参加させていただいた作品。テーマは「真っ白い」。
 ライラ国の姫ライラ・ロジーナの戴冠式直前の様子。以前300字SSポストカードで出した「戴冠式」の、少しだけ前の話です。
 なお、急な戴冠で装身具が間に合わなかったのは、彼女の頭が小さくて、歴代の国王が被ってきた王冠がすっぽり嵌まっちゃうから使えなくて、でも作り直す時間がなかった、という裏事情がございます。(財政難なのでそんなもんいらん、と彼女が突っぱねたという側面も)
 なお、真冬の戴冠式だったので国賓が呼べず(道が雪で通行止めになってるので)国内の貴族達もろくに集まれなくて、ほぼ城の人間だけで執り行われた模様。本当に形だけの式典で、実際のお披露目は春になってから改めて行われました。

(初出:Novelber 2019/2019.12.02)
2020.01.11


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