+後書き+


 番外編競作「その花の名前は」。この企画名を見た瞬間に、ぱっと思い浮かんだお話がこの「追憶の《青》」でした。

 もともとは、「オリキャラさんに50の質問」で、「今だから言える過去の恥ずかしい出来事をひとつ教えて下さい」という質問にラウルがこう答えたのが始まりでした。
「……・都にいた頃に、間違えてオカマを口説いたこと…思い出したくもねえ……」
 この時はさほど深く考えていなかったのですが、それが番外編競作という企画によって花開き、とうとう日の目を見ることになった訳です。

 花をテーマにした作品を、との事だったので、フェリキアという人物、そしてその名前にこだわってみました。
 フェリキア。これはルリヒナギクの学名「Felicia amelloides」から取っています。ブルーデイジーという呼び名の方がピンと来るかもしれません。青い、可憐な花です。
 命名段階では色々と候補があったんです。とにかく最初に思い浮かんだのが青い花だったものですから、青くてきれいな花を色々と探しました。特に最後まで迷っていたのが、日本名「初恋草」というレシュノルティア。花言葉はそのまま、初恋。不思議な雰囲気の名前でいいな、と思いましたが、長すぎるかな、と断念。結果フェリキアと名づけました。決まってみれば、これほど彼女に似合っている名前はなかったと思います。
 ついでに言ってしまうと、「アステル」という本名は「紫苑」の学名「Aster tataricus」から。紫苑の花言葉は、追憶です。

 若かりし頃のラウル。今よりもちょっとだけヤンチャな彼を一目で虜にした、旅芸人一座の看板女優フェリキア。
 決して結ばれる事のない二人。突然の、そして永遠の別れ。
 ……って書くと、なんか悲恋ですね。いや、これも勿論そのつもりで書いたんですけど、悲恋の方向性がちょっと違うような……。滅多にこういう話を書かないので、ちょっとどきどきでした。

 番外編なのに長編って何事?!とお思いの方、大勢いらっしゃるでしょう。
 当初の予定では、長くても中編程度で収めるはずだったんですよ。ところがつい筆が乗って、この有様です。
 しかも企画用テンプレートの方はこちらと違って分割していないという……。
 本当はこちらも分割せず、一ページで収めたかったんです。一気に最後まで読んで欲しい作品だったので、どうしようか迷ったんですが、あまりにも長いので分割しました。いやほんと、長いですよね。長い作品しか書けなくなってるのかな……(>_<)

 女たらしで通っていた頃のラウル。仲間とつるんで街を闊歩する彼はとても伸び伸びとしていて、書いていてとても楽しかったです。
 そしてフェリキア。今まで書いてきた女性陣の中で一番儚く、そして一番強い女性です。彼女は私が思い描く理想の女性像なんだと思います。もっと彼女を書いていたかったなあ……。
 マレイン一座やラウルの悪友二人もかなりお気に入りです。一座の方は双子以外名前も出してあげられなくって、ちょっと残念。

 後書き冒頭で書きました、「今だから言える過去の恥ずかしい出来事をひとつ教えて下さい」という質問。
 「…思い出したくもねえ…」と答えていたのは照れくさいのと、まだこの「幻の恋」を引きずっているからでしょうね。
 もうちょっと心の整理がついたら、きっと笑い話にできるようになるでしょう。

 執筆中、大概は主人公に感情移入して書いています。ですので、この作品を書いている間、私もまたフェリキアに心底惚れ込んでいました。
 ラウルの言葉じゃないけど、フェリキアは本当にいい女でした……。

 おっと、後書きまで長くなってる……。
 ここまでお付き合い下さいまして、ありがとうございました。

2003.06.16 seeds




 ちなみに、フェリキアの花言葉は文中で紹介した「純粋」のほかに、もう一つあります。
 幸福。それがフェリキアの花言葉。

 彼女は、幸せでした



学名 Felicia amelloides
和名 ルリヒナギク
英名 Blue daisy
科名 キク科
属名 フェリキア属
性状 常緑小低木(半耐寒性)
原産地 南アフリカ


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