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glow
 最初は焚火。旅の途中、野営するために熾した小さな火。それが私。
 火に手をかざして、ふと笑った貴方の優しい瞳に運命を感じたの。
 暖かいな、なんて褒めてくれたから、頑張って燃え続けたわ。冷え切った貴方の体と心を、少しでも暖めるために。
 お次は角灯。暗い洞窟の奥、不気味な屋敷の地下。宿屋で夜更かしする時も。そっと周囲を照らしながら、貴方の横顔を眺めるのが好きだった。
 最後は暖炉。寒さが苦手な貴方は、雪が降る前から暖炉の前に陣取って、頑として動こうとしなかったわね。
「長いこと、世話になったな」
 それはこちらの台詞だわ。だって私は貴方の契約精霊。貴方こそが私の存在理由。
 命の炎が消えるその時まで、共に在りましょう。
Twitter300字ss」 第二十八回「火・炎」
 「未来の卵」より遥か昔、ゲルク老と共にエスト村へ定住した偏屈な精霊使いグランと、その契約精霊である火の精霊の小話。
 「未来の卵」でラウルに提供された村外れの小屋は、このグランが住んでいた小屋です。
 グランが住んでいた頃は、台所の竃と居間の暖炉、そして風呂釜は火の精霊が管理してたので、火加減ばっちりだった、という設定を遥か昔に思いついて、しかしどこにも生かせず(笑) 寝かせていたのを思い出して引っ張り出してきました。
(かの世界では、本来精霊というのは自然に存在するもので、一所にとどめておけるものではないのですが、所定の手続きを経て契約を交わすことで、契約期間中はその精霊使いのもとで行動することが可能になります)

 この火の精霊ちゃんは、「邂逅~一枚の地図~」で出てき――かけてましたが、もうちょっとというところで話が進んじゃって結局出られませんでした(笑) 確か初稿ではめっちゃ出てたんですが、長くなったんで削ったんだった……。
2018.02.09


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