| 二日目 |
今度こそ、みんなに楽しく分かってもらわなきゃ! 何度も何度も予習したし、これなら大丈夫! と思うんだけど……。 どうなることやら……。 * * * * *
はい、じゃあ今日の歴史の授業を始めます。 この間は神話について話したけど、今日はその後の時代。『ファーン』に満ちた命、つまり私達の祖先が世界を動かすようになった時代の話をしましょうね。 今、私達が使っている暦は分かりますね? 今は「ファーン復活暦」です。今年はファーン復活暦703年だから、今の暦に切り替わったのは703年前。切り替わる前の暦は「ファーン暦」という暦を使っていました。 今日はそのファーン暦の時代についてお話しましょう。 みんなは、お隣の中央大陸ガイリアを知っていますよね。あの中央大陸ガイリアに、初めての国、ティエン国が誕生した年をもって、ファーン暦元年とされたと言われています。 なぜ『ファーン暦』という名前になったのか、誰がその暦を定めたのかは、分かっていません。だから、本当なところは歴史を司る女神、ルース様しかご存じないでしょう。 それはともかくとして。ファーン暦が使われていたのは、今から約七百年ほど前です。その頃にはまだ今ほど羊皮紙や紙が普及していなかったし、文字も様々なものを使っていたようなので、その頃のことを知るには各地に伝わる伝承や、石に刻まれた文章などを研究するしかないんです。 そういった研究の結果分かっているファーン暦時代やそれ以前の歴史について、お話しましょう。 各大陸に生まれた様々な種族は、最初はそれぞれの生まれた大陸を出ようとしませんでした。しかし、だんだん家族が増えてくると、住む場所を巡って戦ったりするようになりました。特に戦いが酷かったのは、人間の生まれた地である中央大陸ガイリアでした。人間は各種族の中でもっとも繁殖力、つまり家族を作る力が強かったのです。ガイリアは戦乱の地となり、そしてそこから他の大陸に、土地を求めて脱出する人間が出現しました。 彼らは大きな船を作り、西大陸ルースへと向かいました。それがファーン暦148年の事です。西大陸には豊かな森と草原が広がり、移住した人間はそこで初めての、他大陸における人間の村を作りました。 ガイリア大陸はその後も土地争いが続き、移民団がどんどん他大陸へと進出していきました。165年にはアイシャス大陸への移民が始まり、その中には魔術士もたくさんいました。彼らは力を合わせ、北大陸アイシャスに魔法大国ルーンを建国しました。それが221年のことです。 移民は更に続き、237年には東大陸ケルナへの移民も始まりました。 東大陸には先住種族の空人さん達がいましたが、彼らは人間達の到来を寛容に受け入れ、自分達の住まない平野に町を作る人間達に色々と手を貸してくれたりもしました。 そして、運命のファーン暦254年。邪竜と呼ばれる禍々しき竜が、ガイリアの地に出現しました。 邪竜は、生けるものの負の想念――つまり、怒ったり、嫌ったり、悲しんだり、妬んだりする感情が力を持ち、生まれた存在だったと言います。その邪竜がガイリア大陸に出現したことで、ガイリア大陸からの人間の移民は数を増やし、258年にはそれまで未開の地だった南大陸アイシャスにまでも移民が始まりました。 人々は邪竜に対抗する術を持たず、ガイリアに残った人間は次々と殺されていきました。ガイリアの大地は枯れ、風は淀み、水は濁り、炎は命を焼き尽くす非業の炎となり、中央大陸は死の大陸と化そうとしていました。また、邪竜を崇める邪教集団も現れ、邪竜とともにガイリアの命を弄び、また他の大陸へも侵攻していったのです。 その惨状に心を痛めた女神ガイリアは、闇の神ユークと力を合わせ、神の力を受け継ぎし勇者、ファーンを創造しました。それが260年のことだと言われています。 勇者ファーンは邪竜討伐の命を受け、ただちにファーンの大地に降り立ちました。そして邪教徒の妨害や人々からの迫害を受けながらも苦難の末、邪竜を打ち倒しました。それがファーン暦263年のことです。 しかし、勇者ファーンは邪竜を打ち倒した後、自らも姿を消してしまいました。人々は帰らぬ勇者ファーンを讃え、その年をもってファーン復活暦元年としました。 なぜ『復活暦』という名前がついたかというと、これもきちんと分かってはいません。でも通説では、邪竜によって一度は滅びそうになったこの世界を、勇者ファーンが邪竜を打ち倒したことで、世界は再び甦った。つまり復活した、という意味なのではないか、と言われています。 ……はい、じゃあ今日はここまでだけど、何か質問はある? 「はーい、先生!」 はい、リック君。 「あのね、全然関係ないんだけどさ、聞いてもいい?」 なぁに? 何でも聞いてちょうだい。 「あのさ、なんで一年は365日なの?」 ……う。 そ、それじゃあ次の授業は、その事をやりましょうね。 「えー! 今教えてよ!」 ごめんね〜。そこまで復習してきてなかったの。 「先生、もっとしっかりやれよ」 「そーだそーだ。先生は先生なんだから」 ……本当にごめんね。次の時までに、ちゃんと調べておくから。 「しょうがねぇなぁ。ちゃんと勉強してくんだぜ、先生」 ……は〜い。 |
| →二日目・補足 |
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