| 四日目 |
はい、それじゃあ今日の授業を始めます。 今日はファーン復活暦以降の話ね。ここからは長くなるから、適当に区切ってお話します。 色々な大陸の話が出てくるから、ちゃんと聞いてないとこんがらがっちゃうわよ。 まず、魔法大国ルーンのお話。このルーンについて、知ってる人はいる? 「はい! 私知ってる!」 じゃあ、どんなことを知ってるか教えてね。ミリナ。 「えっとね、ルーンには魔法使いがいっぱいいてね。それで、魔法使いじゃない人を馬鹿にしてて、最後にはどかーんってなくなっちゃったの!」 はい、ありがとう。よく知ってるわね。 「私のおじいちゃんは魔法使いだもん! でも、いい魔法使いだよ。私はサイノーないけど、おじいちゃん優しいもん!」 そうね。ミリナのお爺さまは、『央の塔』にいらした魔術士ですものね。私もミリナのお爺さま、大好きよ。とても博学で、それをひけらかさない所が素敵よね。 えっと、何の話だったっけ? あ、そうそう。ミリナの教えてくれた通り、魔法大国ルーンは、魔法使いの集う国でした。 でも、最初っから魔法使いがいっぱいいたわけじゃないの。ガイリアからアイシャス大陸に移民が始まった時、移民団が考えたのは、アイシャス大陸の寒さをどうするか。今でもそうだけど、アイシャス大陸の寒さは人が生きていられないほど酷いもので、移民団はその寒さを、魔術や精霊術などの力でなんとかしようとしたらしいの。それで、移民団の中に魔法使いや精霊使いが多かったんですって。 それで、結局精霊術ではその寒さを和らげることが出来ず、魔法使い達が魔術を使って寒さを防ぐ結界を張ったり、寒さそのものを改善しようと頑張った結果、魔法使いの人数も増え、そして次第に彼らが優位な社会というものが生まれてきたの。だって、魔法の力を使えない人達からすれば、彼らは自分達の生活を守ってくれる、すごい人だものね。 そして、魔法使いが国を治めるという形が次第に作られてきました。魔法大国ルーンが正式に建国したのは、ファーン暦221年です。 この国では、次第に魔力を持たない人を『平民』、魔法使いを『選民』と区別して、選民ばかりをえこひいきするようになりました。それだけならまだしも、最後には平民を奴隷として扱うようになってしまったの。 そして結局、魔法大国ルーンはファーン復活暦45年に、突然滅んでしまいました。 その原因は、今も分かっていません。魔法装置が暴走したからとも、平民が反乱を起こしたからとも言われてるけど、とある一人の魔法使いが、魔法でルーンを滅ばしたという噂もあります。本当のところはルース様しかご存じじゃないでしょうね。 この魔法大国ルーンが原因で、魔法使いは人々から恐れられる存在となってしまいました。 さて、そのルーンから、滅亡前に脱出を果たした人達がいました。彼らは中央大陸ガイリアに辿り着き、そしてヒーシュテルン王国を建国しました。 その頃、ガイリア大陸には他に二つの国がありました。一つは東側のメルニアス王国。この国は、ファーン暦89年に建国された国です。ファーン暦を制定したティエン国が周囲の町や小国を統合して、国の名前を変えたのね。もう一つは西側のアストアナ国。こちらはファーン暦240年に建国された国です。 歴史の長い二つの国の北側に位置するヒーシュテルン王国は、ルーンの魔法技術や魔法の品を唯一継承している国で、今でも他の国にはない魔法装置や技術が町に使われています。釦を押すだけで天井に明かりがつく装置とか、竃に火が付く装置とかね。 さて、ガイリア大陸から西大陸ケルナに移民した人達は、ファーン復活暦50年に都市国家イリアを建国しました。この都市国家イリアは、今は今みんなが暮らしてるこのシールズ神聖国のイリアの町として残っています。 また、ケルナ大陸の南側には、ファーン復活暦71年にヴェストア帝国が建国されました。 ヴェストア帝国は、ファーン復活暦81年頃から、勢力を広めようと隣国であるイリアに対して戦いを挑みましたが、イリアを守る風と戦の女神ケルナの神官戦士達の活躍によって帝国の侵略は阻止され続けました。 さて、その頃中央大陸ガイリアでは、メルニアス王国が一つの方針を打ち出して、国民の一部を驚愕させました。それは、人間以外、つまり森人や山人、空人といった人達を 『亜人』と呼んで区別し、『亜人』は人間と同じ扱いをしてはいけないという法律を公布したのです。 どういうことか分かる? えっとね、つまり先生みたいに森人と人間の混血児や、フォルタ君みたいな空人は、みんなからいじめられて、こういう風に学校に通うことも、普通の仕事をすることも禁じられたの。 そして更には、国外追放の法律まで出来てしまいました。国内に留まる『亜人』は殺してもかまわないという御触れが出て、沢山の人達が殺されたり、傷つけられたりしたの。 「ひどいや、そんなの! 何がいけないんだよ」 そうね。この御触れがなぜ出されたか詳しくは分かっていないけど、研究では、この時のメルニアス王国の国王の一人娘、つまり王女様が、森人の青年に恋をして駈け落ちをしてしまい、結果王女様は王様の差し向けた追っ手から森人の青年を守るために死んでしまったという事実があって、そのせいで王様が人間以外を憎んでしまったのではないか、と言われています。 「自分の娘が死んだのは、自分のせいだろ? そんなの八つ当たりじゃん」 そうね。でも、きっと王様はそれ程までに王女様を愛してたんじゃないかしら。それを、どこの誰とも知らない男に持っていかれて、悔しかったのかしらね。それがたまたま森人の青年だったせいで、王女を失った悲しみと怒りが『亜人』追放という形で表れてしまったんじゃないかと言われてるわ。 「……そんなのって、ないよ」 ……そうね。 この後メルニアス王国は約三百年ほど『亜人』追放を続け、人間だけが暮らす国となりました。 じゃあ、今日の授業はここまで。 |
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