五日目

 はい、それじゃ今日の授業を始めます。
 今日は、ファーン復活暦100年以降のお話をします。

 まず、ファーン復活暦136年に起こった一つの事件ね。知ってる人はいるかしら?
 西大陸ルースで大地震が発生して、『大地の爪痕』と呼ばれる大きな大地溝が出来ました。この地震で多くの人が亡くなったんだけれど、この地震の原因は分かっていません。
 一つだけ分かっているのは、ただの地震ではなく、特殊な力が大地に働いた結果だということ。だから西大陸の人達は、魔術士の仕業であるとか、大地の竜が寝返りを打ったからだとか、色々に言っています。
 西大陸のルース本神殿でも今だに、この大地の爪痕の調査を行なっていますが、この大地溝はとてつもなく深く、一番奥まで辿り着いたものは未だにいません。

 さて、ファーン復活暦249年。度重なるヴェストア帝国の侵略を防いだケルナ神官戦士達を讃えて、その時のイリアの元首はケルナ本神殿を建立し、またケルナの神官戦士の指導者だったジャスティ=シールに王位を授けました。
 ジャスティは国の名前をシールズ神聖国と変え、ケルナ神殿による国の統治を始めました。それが、私達が今暮らしているこのシールズ神聖国の始まりです。
 みんなの中にも、ケルナ様の信者の人達はいる?

「ボクそうだよ!」
「あたしも!」
「俺も……」

 ひのふのみ、と。いっぱいいるわね。ええと、ケルナ様はこの大陸をお作りになった女神様だから、この大陸の人が一番多く信仰しているのはケルナ様。空人の中にも、ケルナ様を信仰している人達は多いと言われています。

 さて、今度はファーン復活暦350年。この年に、西大陸ルースで細々と活動していた邪教集団『黒き炎』が、冒険者達によって壊滅しました。『黒き炎』は、ファーン暦263年に邪竜が打ち倒された後も、細々と生き残っていたのね。それが初めて大々的な壊滅にあったのが、この350年です。でも、彼らは完全に消滅した訳ではなく、まだこのファーンの世界に蔓延っているといわれています。みんなも、気を付けてね。彼らは子供を攫ったり、わざと戦争を起こしたりして邪竜を復活させようとしている、危険な人達だから。

 ファーン復活暦514年には、東大陸の『閉ざされし島』の結界が解かれ、四百年余り外界との接触を断っていた島民が人々の前に姿を現しました。

「なんで?」

 何でだと思う?

「……うーんと、飽きちゃったからじゃない?」
「僕だったら、そんな狭い島にずーっといたら飽きちゃうもん」


 そうね。先生も多分飽きちゃうと思うわ。
 その通り。彼らは、外界との接触を断った小さな世界から羽ばたこうとしたの。
 でも、それまでには大変な苦労があったというわ。自分達を追放した恐ろしい人間達が、今でも彼らを排除しようとしているのではないか、とか、すでに自分達と同じ種族は外の世界にはいないんじゃないかとか、不安の材料は沢山あったんですもの。それを乗り越えて、彼らは国を開いたの。新しい明日を求めてね。

 さて、どんどん行くわよ。
 復活暦575年には、南大陸パリーにドルネス王国という国が建国されました。その国は、最初の移民団が建国した二つの国、トゥラ国とオーリン国の中間にあり、新たに発見した水脈によって、両方の国に水を供給する役割を担うことになりました。
 この国の建国王は、『閉ざされし島』出身のリー・マイス=ドルネス。建国王リー・マイスと呼ばれています。彼は、この後580年にケルナ大陸に建国される、お隣の国ウェイシャンローティ国の建国王シン=ローティの旅仲間だったと伝えられています。

 さて、復活暦649年に、西大陸ルースに初の賢者の塔、『西の塔』が作られました。この賢者の塔は、ヒーシュテルン王国の魔術士が提案した魔術士達の組織の一環で、各大陸に一つずつ、計五つの塔を作り、魔術士の教育と研究、そして魔術士達を束ねる機関になるよう提案されたものです。
 続いて復活暦652年にはガイリア大陸に『央の塔』が建設されました。

 復活暦654年には、このケルナ大陸の北東に位置する、ヴェストア帝国の飛び地、シュトゥルム公爵領が本国から独立し、シュトゥルム公国が建国されました。
 この国には、他大陸から良質の鉱山を求めてやってきた山人達が大勢暮らしています。彼らと技術提携することで、このシュトゥルム公国は他国にない、火薬や銃といった兵器を生み出してきました。

 復活暦660年にはこの東大陸に『東の塔』が作られました。 これで賢者の塔は三つ。残る二つ、『北の塔』と『南の塔』は現在、まだ建設中です。

 さて、そろそろみんなが生まれた後の時代に入ります。

 復活暦699年、今から四年前に、ヴェストア帝国で革命戦争が始まりました。
 ヴェストア帝国は苛酷な帝政を敷いて国民達を苦しめている国でしたが、最後の皇帝であるルシエラは、強大な魔力をもって君臨していました。
 この徹底した帝政は特権階級と民衆との衝突を生み、そして革命戦争が始まったのです。
 結局、戦争は革命軍側の勝利に終わり、復活暦701年、マースヴァルト共和国が誕生しました。
 この戦争の時、この国は革命軍側に援助を行ない、また多くの冒険者や力あるものが、個人的に革命軍に参入していました。
 みんなの家族の方の中にも、戦争に行った人がいるんじゃないかしら? 先生の従兄もこの戦争に参加して、五英雄と呼ばれる人達と肩を並べて戦ったって、今だに自慢してるのよ。

→五日目・補足
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