やア、お客さん。このお店は初めてダネ?
フシギなものがいっぱいだッテ? そりゃそうサ、ここにあるものはすべテ、魔法の品なんだカラ。
ソウ、ここは魔法のお店。魔法に関するものナラ手に入らないものはナイと評判の、《ジョーカー魔法店》だヨ。
さて、お客さん。お探しのものは何かナ?
エ? 別に魔法の品は探してない? まあまあソウ言わずに、見ていってヨ。面白いものもいっぱいあるヨ。
例えバほら、この羅針盤。かっこいいでショ? え? 北を指してナイ? そうなんダ。これは北を指さない羅針盤なんダヨ。
え? 使い物にならない? そんなことないヨ。これはネ、『その人にとっての宝物』を指し示す羅針盤なのサ。
面白くナイ? じゃあこっちはどうカナ。
また羅針盤かって? しかもまた壊れてる? 違うヨ、お客さん。これは《運命の人》を指し示す羅針盤。この針に従って進めバ《運命の人》に出会えるっテ寸法だヨ。
羅針盤はもういい? 分かったワカッタ、それじゃこれダ。ただの古ぼけた揺り椅子じゃないかっテ? いやイヤ、これはネ、座った人間を一瞬のうちに眠らせる魔法がかかってるんダ。不眠症の人にうってつけダヨ。問題は、誰かが起こしてくれナイ限り、ずっと眠り続けちゃうコト。
そんな物騒なものはいらない? そうカ、じゃあこっちはどうカナ。これはネ、飲み物に一滴垂らすだけデ嘘が言えなくなル薬。こんな色だけド無味無臭。効果は半日しカもたないケド、嘘を言おうとするト勝手に口が真実を紡ぎ出ス。気になル人に使ってみれバ? 結構面白いヨ?
え? そんな人はいない? オヤ、残念。
じゃア、とっておきを紹介しよウ。えっと、どこにあったカナ? ああ、これコレ。
きれいでショ、この鏡。これはネ、とある国の王妃様が使っていタ魔法の鏡なんダ。ほら鏡、起きておきテ。
『なんでえ、ジョーカー。俺は美しいものしか映したくないって言ってんだろ!? こんな小汚ねえ客に売りつけようなんてムガッ――!』
この通り口が悪くテ買い手がつかないんダヨ。だけど性能は折り紙つきサ。本当の姿を見極めテ、嘘偽りなく表す。ホラ、この通り。
『うおっ、なんだ姉ちゃんだったのかよ。小汚いなんて言って悪かったな。そんなナリしてなきゃお姫様っつっても通るぜ、けっけっけ』
そりゃそうサ、本当にお姫様なんだものネ。アルメリア聖皇国の第一王位継承者、テア・イタ・ベルナ=アルメリウス皇女。
なんで知ってるのかっテ? そりゃモウ、『アルメリアの聖皇女ご乱心』の話題は、このところ世間を賑わせてるからネ。
あれはキミじゃなくテ、皇女の姿に化けた魔物ダ。キミそっくりに成りすましてるけド、見るモノが見れバすぐに分かるのサ。
そしてキミは単身、国を離れテ真実を明らかにすル手段を探してル。そうだロ?
ここに来たのは大正解だヨ。ねエ、鏡。
『なんでえ、俺に何かしろってか?』
キミなラ、偽者の正体を暴けるダロ? なんたっテ、伝説の《真実の鏡》なンだからサ。
『あんまり気がのらねえが、お姫様の頼みとあっちゃ断れねえなあ。よぉし、いっちょその偽者とやらの正体、暴いてやろうぜ!』
ほらホラ、泣くのはまだ早いヨ、お姫様。キミにはこれかラ、国へ帰っテ偽者の正体を暴き、その黒幕を退治すルお仕事が残ってるんだからネ。
『おいおいジョーカー。こんな剣も握ったことのねえようなお姫様に、それ全部やれってか?』
そんなコトは言ってないヨ。
ほらコレ、持ってごらン。この針の示す先にいる人が、きっとキミを助けてくれル。
さア、見てみよウ。どれドレ? おヤ、どんどん近づいテきてるみたいだネ?
シャラン シャララン
「ちょっとジョーカー、買い取ってもらいたいもんがあるんだけど」
「こ、こんにちはー」
おやオヤ、いらっしゃイ、リダにギル君。
オヤ? 針が定まったネ。うんウン、なるほド。キミの運命の人は、この二人だっタみたいダネ。
「何の話よ?」
こっちの話だヨ。大丈夫、この二人なラ間違いなイ。キミの厄介ゴト、全部引き受けてくれるヨ。
「もしかして仕事の話ですか? 良かった。そろそろ路銀がやばくって……」
サア、お姫様。涙を拭いテ。
キミの運命に立ち向かっテおいデ。
お代は、万事上手くいってからデ構わないからネ。