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金の鷹 銀の小鳥
 世の中にはよく、「運命的な出会い」だの「雷に打たれたように」などとおっしゃる方がいらっしゃるけれど、そんなのは嘘だと思っていたわ。
 だってそうでしょう? 出会った瞬間に生涯の伴侶だと分かるなら、別れる人なんていないはずだもの。
 だけど、今回ばかりは私も、この主張を撤回せざるを得ないようね。
 なぜならたった今、私も恋に落ちたから。
「うへえ、真っ白になっちまった」
 騒音と共に転がり込んできた、一人の若者。けほけほ咳き込みながらも隙なく辺りを見回す金色の双眸は、まるで鷹のよう。自由を愛し、高く空を飛ぶ孤高の鷹。籠の鳥である私とは大違いだわ。
 思わず見つめてしまったら、不意に目が合った。
 その瞬間、その金の瞳に、心まで射抜かれてしまったの。
「あんたが、銀の姫?」
「そうよ、泥棒さん。それとも人攫いさんかしら? でも残念ね。私をさらっても、いいことなんてないわよ」
 そう、私は籠の鳥。可愛がってくれる人もなく、気にかけてくれる者もなく、ここで一人歌うだけの、無力な銀の小鳥――なんて、ちょっと感傷的かしら。泥棒さんもちょっと呆れ顔だわ。
「でも……私がいなくなっても、きっと誰も困らないの」
 お城にも、この塔にも、私を必要としてくれる人はいない。誰にも気に止められないのなら、それはいないのと一緒だわ。
 だけど、目の前にいる泥棒さんは、まっすぐに私を見てくれている。瞳をきらきらさせて、まるで宝石でも見るように。
 私にとって、あなたの瞳こそが宝石。
 そう、あなたこそが、一番の宝物だわ。

「荒野の塔に秘められたお宝、この『鷹の目』が確かに頂いた。さあ、行こう! 我が姫君」
「ええ、いいわ。世界の果てまで連れて行って。私の泥棒さん」

 たとえ今日、世界が終わっても
 あなたと一緒ならば、怖くない
 あなたは自由 あなたは希望
 私の、ただ一つの宝物

金の鷹 銀の小鳥・終わり


2009.11.15 同人誌『御伽噺』のおまけ掌編として掲載/2016.03.27 サイト掲載


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