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第五場 〜結〜

◇裏山
◇◇◇◇◇
(舞台)岩
◇◇◇◇◇
(音響)重苦しい感じの曲
◇◇◇◇◇
(照明)赤(夕焼け)
ミ ラ  なぜお前はこの星を庇い立てする?
部 長 この星はいい星だ。自然も、動物も、植物も。すべてが素晴らしい星だ
ミ ラ  人間はそれを破滅に追いやっている
部 長 いずれ、自分の犯した罪に気付くさ。そこまで馬鹿ではないだろう
ミ ラ  いいや、馬鹿だ
部 長 すべてを見ずにそんなことが断言できるのか?
ミ ラ  馬鹿だ! 『人間』も、『地球』も、そしてお前も!
◇◇◇◇◇
ミラ、銃を取り出す
◇◇◇◇◇
同時にかすみ上手から登場
かすみ やめて!
部 長 かすみ君、来るんじゃない!(走り寄ろうとする)
ミ ラ  動くな!
部 長 私を殺す、とでも言うのか?
ミ ラ  ドクター・ルカは反逆罪で指名手配中だ。抵抗あった場合は射殺も認められている
部 長 同じ種族同士の殺し合いは野蛮な証拠なのだろう? それをやろうとでも?
ミ ラ  それは……
部 長 かすみ君、何故来たんだ。早く離れなさい。危ないぞ
ミ ラ  お前はこの『人間』とかいう下等動物に感化されているようだな。特に、この『かすみ』とかいう小娘には執着のようだ。同じ星の、そして
◇◇◇同じ評議会の者として、私は情けなく思うぞ
かすみ (驚く)
部 長 かすみ君は私の大切な後輩だからね
ミ ラ  ならば、その小娘の言うことならば聞くか
部 長 どういうことだ
ミ ラ  正しくは、小娘の命と引き換えということだ!(銃をかすみに向ける)
◇◇◇◇◇
セレ登場
セ レ やめて下さい、ミラ先輩!(銃をミラに向ける)
ミ ラ  セレ!
かすみ 麗ちゃん?
セ レ  ごめんね、かすみ。あたし、評議会の監察官なの。それで、あたしが原因なの
かすみ 麗ちゃん、どういうこと?
セ レ  先輩、やめて下さい! 地球を破壊しないでください!
ミ ラ  セレ、何故だ? こんな星を、何故お前まで庇う? こんな汚れ切った星など、救えるはずがないじゃないか
部 長 まだ可能性はある
ミ ラ  可能性など、あるはずがない!
かすみ だって、あなたは全部を見たわけじゃないでしょ! 確かにこの地球はボロボロだよ。人間も酷いことばっかりしてる。でも、全部が全部、
◇◇◇そうなんじゃない!
部 長 人間の中にも、地球の未来を憂いでいるものはいる
セ レ 自然や生き物、全部ひっくるめてあたしはこの地球が大好きだから……、なくなってほしくないから
部 長 私もだ
セ レ ミラ先輩、さっき評議会に訂正報告と、地球破壊命令解除の申請をしました。すぐに返事が来るはずです。それまで、待ってください。
◇◇◇お願いします!
ミ ラ  駄目だ。評議会の命令は絶対だ!
セ レ ……どうしてもですか?
ミ ラ  駄目だっ!
セ レ ……そしたらあたしは、この銃の引き金をひかなきゃいけなくなります!
ミ ラ  馬鹿な考えはよせ! セレ!
セ レ 先輩、ごめんなさい!
◇◇◇◇◇
(音響)ブザー
部 長 なんだ、この音は
セ レ ミラ先輩の通信機じゃないですか?
ミ ラ  また評議長か?(コンパクトを取出し、スイッチを入れる)
評議長 (声)特別派遣官、ミラに告ぐ。監察官セレの緊急報告により、地球破壊命令は撤回された。直ちに破壊行為を停止し帰還せよ。なお、
◇◇◇撤回理由はセレの報告ミス。よってセレにはあと百年の観察の続行を申し渡す。以上
ミ ラ  地球破壊命令が撤回?
部 長 君の訂正報告が間に合ったようだね
セ レ 良かった……
かすみ じゃあ、地球は滅びなくてもいいんですね
ミ ラ  ああ
部 長 なんだ、随分とあっさり言うな。こんな汚れ切った星など救えないのではなかったのかね?
ミ ラ  言っただろう? 私は評議会の命令に従うだけだ。こんな汚れ切った星がどうなろうと、私の知ったことではない。滅びようと、救われよう
◇◇◇とな
かすみ 部長。最終兵器を破壊して下さい
部 長 ああ。勿論。これを、ここに取り付けて……。これでよし
◇◇◇◇◇
(音響)機械音声「『最終兵器破壊装置』がONになりました。破壊まで一分お待ちください。59、58、57……」
部 長 これで最終兵器は根源から粉々になる。もう安心だ
ミ ラ  今回のことで、二人には迷惑をかけた。すまない。まったく、こいつのせいで
セ レ  ミラ先輩だってそうじゃないですかぁっ! あたし一人の責任にしないで下さいよっ
ミ ラ  元はと言えば、お前の報告書がいけないんだろーがっ!
部 長 まあまあ。終わり良ければ全てよしとは言い難いが、とにかく地球は救われたんだ。よしとしようじゃないか
セ レ さすがはドクター・ルカ! 心が広い
かすみ 一時はどうなるかと思ったけど……なんとかなって良かった
◇◇◇◇◇
カウントダウンが残り10秒になるまでアドリブでしゃべり続ける
◇◇◇◇◇
(音響)機械音声「10、9、8……」
部 長 さあ、もう少し離れよう
◇◇◇◇◇
(音響)機械音声「破壊装置、作動します」
◇◇◇◇◇
(音響)爆破音
◇◇◇◇◇
(照明)様々な色の光があたりを照らす
◇◇◇◇◇
(音響)静かな音楽
◇◇◇◇◇
(照明)明
部 長 ……終わったな
かすみ これでもう、大丈夫ですね
部 長 勿論だ。地球の未来は明るいぞ
ミ ラ  ドクター・ルカ
部 長 分かっている。国家反逆罪と逃亡罪、国家機密の持ち逃げ、だろう?
ミ ラ  ……その通りだ
かすみ 部長……
部 長 かすみ君、私は罪を犯した者だ。犯した罪は償わなければならない
ミ ラ  もう百年前の出来事だ。重い罪にはならないだろう
かすみ 部長、行っちゃうんですか?
部 長 必ず帰ってくるから、それまで天文部、潰すなよ
かすみ はい……分かりました!
ミ ラ  では、行こう
部 長 またな、かすみ君!
◇◇◇◇◇
歩きだす二人。見送るかすみとセレ
◇◇◇◇◇
(照明)暗転
評議長 (声)ドクター・ルカ。国家反逆罪、逃亡罪、国家機密の持ち逃げの罪により、N254惑星の住民権を剥奪。残された生涯を、『地球』の
◇◇◇保護・指導に努めること
◇◇◇◇◇
(音響)音楽(宇宙のイメージ)
部 長 (声)地球は傷ついている。そしてその原因は人間だ。確かに人間は滅びた方がいいのかもしれない。だけどそれは、当事者の意志に
◇◇◇任せることが必要だと、私は思うぞ
ミ ラ  (声)どういうことだ?
部 長 (声)私達のような外部の者が判断して実行するようでは駄目だ、ということだ
ミ ラ  (声)つまり、すべての人間と、そして地球に存在する者の意志で判断しなくてはならないと
部 長 (声)そういうことだ
ミ ラ  (声)他人に頼ってはいけない。自分のことは自分で判断し、行動しなければいけない。そして、罪は自分で償わなければならない。
◇◇◇そういうことだな
部 長 (声)私なんか、その点偉いと思わないか? こうして自分の罪を償うべくしているのだからな
ミ ラ  (声)自分で言うな! ほら、もうすぐだぞ
部 長 (声)『生涯地球を守り、導くこと』とは、なかなかいい罪を課してくれたよ。これからの人生、地球人として生きていかれるなんて、
◇◇◇素晴らしいことだ。君もどうだね?
ミ ラ  (声)遠慮しておく。さあ、着いたぞ。『地球』に
部 長 (声)きれいだな
ミ ラ  (声)まったくだ
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