故郷の村を飛び出したのは、十五歳の誕生日を控えた春だった。
村の外は危険がいっぱいだとさんざん脅かされていたけれど、そんなものは怖くなかった。
必死に貯めた小遣いと好奇心だけをポケットに詰め込んで、広い世界に飛び出した。
あちこちの街を巡り、沢山の経験を積んだ。
怖い思いもしたし、危険な目にも遭った。それと同じだけ、もしくはそれ以上に、楽しいことや嬉しいことがあったから、旅を続けることが出来た。
過去を振り返る暇も、未来を夢見る余裕もなかった。ただひたすらに今を生き続けたら、いつの間にか長い時が経っていた。
ぐるりと世界を一周して、最後に辿り着いたのは、何十年も前に滅びた故郷の村。
遙かなる故郷は、思い出の彼方。
本当に遙かな――手の届かないところへいってしまった。