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凱旋
 勇者が魔王を討伐した――その一報がもたらされた瞬間、国中が歓喜に包まれた。

 世界の果てにある魔王城を目指して旅立った若き勇者一行。彼らの旅路は想像以上に険しいものとなった。
 幾度も裏切られ、仲間を失い――最後はただ一人、魔王城へと乗り込んだ勇者。
 その死闘を目撃した者はいなかったが、ある日突然魔王城は倒壊し、魔物達は一匹残らず塵となって消えた。禍々しい雲に覆われていた空は青く澄み渡り、毒の沼地は清浄なる水を湛え、草一本生えなかった荒野には花が咲き乱れた。

 ようやく訪れた平和に、誰もが喜び、笑い、明日を謳う。
 祝賀の行進が行われ、祭は三日三晩続いてなお、終わる気配もない。

 そして未だ――勇者は帰ってこない。
Twitter300字ss」 第六十回「祝う」


 なぜ……! こんな話になってしまったのか……!?
 タイトルはあえて「凱旋」とつけました。主役なき凱旋。
2019.12.07



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