[TOP] [HOME]

ひとめぼれ
 目が合った。まさにそういうことだろう。
 気づいた時にはぎゅっと胸に抱きしめて、レジへと向かっていた。
 給料前の財布には些か厳しい出費だったが、気にしないふりをしよう。
 お店で一番大きい袋でも入りきらない大きさだったから、そのまま抱きしめて家まで帰る。
 人の目を気にする余裕などなかった。なぜなら前が見えなかったから。
 なんとか一人暮らしのアパートへ帰り着いて、上着も脱がずに圧縮袋の封を開けば、ぷしゅー、と気の抜けた音が響く。
 サバ折りで圧縮されていた白い物体は、あっという間にふかふかでもちもちのアザラシへと姿を変えた。
 まん丸な黒い瞳が私を見つめる。
 いらっしゃい、私のお友達(ぬいぐるみ)。今日から一緒に、幸せな夢を見よう。
Twitter300字ss」 第五十五回「あう」


 ほぼ実話(^_^;)
 商品名は出しませんが、「しろくてもちもちの、あざらしのぬいぐるみ」を衝動買いしたことがありまして(^^ゞ
 いやほんとでっかいんですよ。全長1mくらい? 店頭には見本しかおいてなかったのですが、どうやって持ち帰ろうかなと思ったら、「圧縮タイプがありますから!」って言われて。
 裏から出てきた「圧縮タイプ」は、見事なサバ折りぺったんこでした…(^^ゞ
 ちゃんと元通りに膨らむのか、一抹の不安がありましたが、ちゃんとふかふかもちもちに戻ってくれて、ほっとした記憶があります。
2019.07.06



[TOP] [HOME]