『その時』は不意に訪れて、そしてヒトはそれに気付かない。
家から、街から、世界から、すべての猫が消える。まるで示し合わせたように、一斉にいなくなる。
ヒトはそのことを疑問にも思わない。「あら、どこに隠れてるのかしら」で済まされてしまうほどに、それは短時間で、それもさり気なく、日常的に起こることだから。
そうして姿を消した猫たちは、秘密の場所で今日も『定例会議』を行うのだ。
「えー、それでは第214487458回・NNN定例会議を開催いたします。まず最初の議題は、黒猫が写真映えしないから不人気だという話題につきまして――」
今回も白熱しそうだなと、野良猫のボスは金色の瞳を光らせる。
私は関係ないもんねと、飼い猫のシロは欠伸をかみ殺す。
撮ったやつの腕が悪いだけだ! と地域猫のノアールは牙をむき出しにする。
さあて、今日はどんな決着を見るのだろうか。
まあ大抵は「時間が来たので解散~」で終わってしまうのだけれど。