ひょんなことからコンビを組むことになった相棒は、まさに『万能』だ。仕事は言うに及ばず、シャツのアイロン掛けから庭木の手入れまで、何をさせてもそつなくこなす――はずだった。
「おい。主に毒見させるってのはどういう了見だ」
「毒見とは失礼な。新作を試してみてくださいとお願いしただけではありませんか」
ほかほかと湯気を立てている『銀色のコーヒー』を前に、稼働三十余年のアンドロイドは満面の笑みを浮かべている。
「心配なさらずとも、数値上は美味なはずです」
「お前の味覚センサーは信用できない!」
「ええ。だからあなたの味見が必要なのですよ。我が主」
半人前のスパイと旧式アンドロイド。足してようやく一人前というわけだ。