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めがねのきし
 こまった。ひじょーに、こまった。
 今日からじゅぎょーがはじまるっていうのに、ふでばこがない。
 どうしよう。さいしょのじゅぎょーからかくものがないなんて、きっとせんせーにおこられる。
「どうした」
 うしろからこえがして、びっくりしてふりむくと、そこにはメガネをかけたヤツがいた。
「もしかして、筆記用具を忘れたのか? 仕方ないやつだな。これを使え」
 わたしてくれたエンピツはぴかぴかで。そいつのメガネもぴかぴかだった。
「ありがと……えっと、だれだっけ」
「俺は岸だ。岸千夜(きしかずや)
「きし……、すげー、かっこいいなまえだな!」
 そういうと、そいつはおどろいたようなかおをして、それからぽつりと、こういったんだ。
「そんなことを言われたのは、生まれて初めてだ」



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