「なーなー岸、今日、学校に来る途中でさ……」
面白いの見つけたんだよ、と声を潜める級友に、やれやれと肩をすくめる。
「なんだ。また肩乗りオウムおばさんにでも遭遇したか」
「あれ以来会ってないんだよなあ~ってそうじゃなくて! あのな、ここんとこ、いつもと違う道を通ってるんだけど」
先生や親御さんに聞かれたら大目玉じゃないか、それは。
「普通の家の門のところに『おとこ教室』って看板が出ててさ!! すっげえな、何の教室なんだろうな! 帰りにこっそり覗いてみねえ?」
マッチョメンになるための教室かな、などと想像力フル回転なところ申し訳ないのだが。
「菊池。それは『お琴教室』だ」
ひらがなで書かれるとうっかり読み違えるから、できたら漢字で書いてもらいたいところだが。
「ええー! 何だよそれー!」
「マッチョメンになれなくて残念だったな」
「いや、別にマッチョメンになりたいわけじゃないんだけど」
面白そうな教室だと思ったのになー、と残念がる級友に、ほらとチラシを手渡す。
「来週の日曜日、公民館で小学生向けロボット工作教室があるらしいぞ」
「何それ! 行きたい!」
「親御さんにこれを渡して、申し込んでもらえ。ちなみに俺は申込済みだ」
「よっしゃ! 二人で変形合体ロボ作ろうぜ!」
「無茶を言うな」