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寄り道と好奇心
「なーなー岸、今日、学校に来る途中でさ……」
 面白いの見つけたんだよ、と声を潜める級友に、やれやれと肩をすくめる。
「なんだ。また肩乗りオウムおばさんにでも遭遇したか」
「あれ以来会ってないんだよなあ~ってそうじゃなくて! あのな、ここんとこ、いつもと違う道を通ってるんだけど」
 先生や親御さんに聞かれたら大目玉じゃないか、それは。
「普通の家の門のところに『おとこ教室』って看板が出ててさ!! すっげえな、何の教室なんだろうな! 帰りにこっそり覗いてみねえ?」
 マッチョメンになるための教室かな、などと想像力フル回転なところ申し訳ないのだが。
「菊池。それは『お琴教室』だ」
 ひらがなで書かれるとうっかり読み違えるから、できたら漢字で書いてもらいたいところだが。
「ええー! 何だよそれー!」
「マッチョメンになれなくて残念だったな」
「いや、別にマッチョメンになりたいわけじゃないんだけど」
 面白そうな教室だと思ったのになー、と残念がる級友に、ほらとチラシを手渡す。
「来週の日曜日、公民館で小学生向けロボット工作教室があるらしいぞ」
「何それ! 行きたい!」
「親御さんにこれを渡して、申し込んでもらえ。ちなみに俺は申込済みだ」
「よっしゃ! 二人で変形合体ロボ作ろうぜ!」
「無茶を言うな」
Novelber 2020」 04 琴


 twitter上で行われていた「novelber」という企画に参加させていただいた作品。テーマは「琴」。
 このテーマなら「竪琴」だの「琴線に触れる」だの、色々候補はあったはずなのですが、たまたま近所でこの看板を見かけてしまいまして……。それにしても、どうして平仮名で書くんでしょう。謎です。
 周囲が段々と習い事を始めて、ちょっと焦り出していた頃の菊池少年。たまたま見かけた謎の看板に、持ち前の好奇心がくすぐられたのでしょう。

(初出:Novelber 2020/2020.11.08)
2021.04.27



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