記録
復活歴122年 五の月ニ十日 晴れ

 小僧に剣術の手ほどきを始めて三日。基礎体力と能力を調べたところ、かつての通り名の通り、実に俊敏で、何より目が良いようだ。これは鍛え甲斐がある。
 今日はまず、剣術の精神を解こうと指南書を渡したが、「読めるわけないだろ」と一笑に付された。確認したところ、数字だけは一通り分かるようだが、文字となるとかなり怪しい。
 しかし、まだ体も本調子ではない小僧をルース神殿の学校へ通わせるのも問題だし、何よりあの小僧が自分より幾つも下の子供達と大人しく勉学に勤しむとは思えないので、家庭教師をつけることにした。
 私が教えられれば一番いいのだが、不幸なことに私もそう暇ではないので、神殿内で適当に見繕うことにする。
 とはいえ、貧民街から拾ってきた小僧を卑下する者が多い神殿内において、適切な家庭教師役はなかなか見つからない。
 いっそのこと、案外暇そうな本神殿長に押し付けてやろうかと思ったが、あの小僧の逃げ足についていけるとも思えないので、出来るだけ若い者を、と探したところ、最近本神殿仕えになったというオーロ神官の名が挙がってきた。
 彼は三ヶ月前まで隣町のユーク分神殿に勤めていた二十歳の神官で、少々押しの弱いところはあるが、神殿の勝手が分からない小僧を何かと気遣ってくれているようだ。多少口うるさいが、小僧もそんな彼を嫌ってはいないようだし、これは適任だろう。
 他にも何人かに頼むつもりだが、まずはオーロ神官に世話役を頼み、少し様子を見てから徐々に勉強を見てもらうようにしようと思う。
 幸い、小僧は頭の回転も速いし、飲み込みがいい。すぐに年頃の子供達に追いつくだろう。