旅の記録帳 二十三冊目
復活歴138年 七の月十三日 晴れ

 北大陸行きの船に乗って三日。まだエスタスは青い顔をしています。
 東大陸から中央大陸に渡った時もそうでしたが、あのエスタスが船酔い体質だなんてね。きっと故郷のご両親も聞いたらびっくりするでしょうね。

 小さい頃は湖で舟遊びしたこともあるんですけど、やはり外海を行く帆船の揺れは半端ないということでしょう。こうして日記を書いている字も大分よれていることですし。

 エスタスは船室でひたすら寝ていますが、僕とアイシャは船員さん達のお仕事の邪魔にならない程度に、この『青い一角』号の船内を探検しています。
 僕も帆船に乗るのはまだ二回目だし、前回の中央大陸行きの時はエスタスの看病であちこち見て回る暇がなかったので、今回は見るもの全てが目新しくて大興奮です。
 『青い一角』号は四つの帆柱を持つ帆船で、大陸間の定期船として中央大陸のヴェルニー港と北大陸のリトエル港を往復しているそうです。
 アイシャは定期船に乗るのも三回目ということで、さほど物珍しくはないようですが、見張り台に興味があるようで、見張り交代の時なんかはそわそわしています。

 そういえば、この海域にはかつて、船ほどもあるクラゲやタコが生息していたそうです。中には定期船を襲うような怪物もいたとか。目撃例の中には、どうみても魔物なんじゃないかというものまであって、非常に興味深いのですが、それらも三百年以上前にあらかた退治されてしまったそうで、非常に残念です。

 順調に行けば、八の月には北の大地を踏めそうです。それまでに、エスタスの船酔いも治ってくれればいいんですが……。


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