記録
復活歴138年 四の月十二日 晴れ

 今日、塔に新入りさんがやってきました。ライラ国の貴族、ヴァイス男爵家の三男レオンハルト・アルトゥール=ヴァイス君。年齢は14歳だそうです。金髪に青い瞳の、いかにも貴族然とした風貌の持ち主ですが、話してみるととても気さくで気取ったところがなく、好感の持てる少年でした。しかも、いきなり「魔女の大釜」に足を突っ込んでみたりとなかなか見所のある子です。
 その、「魔女の大釜」事件ですっかり彼を気に入ったアルが、彼を弟子にすると言い出しました。
 今まで、どんなに「弟子を取れ」と言われても拒否していたアルが、自分からそう言ったのでとても驚きました。
 アル一人では少々不安なので、私も修行のお手伝いをしようと思います。リファもその方がいいと仰いましたし。

 さて、まず最初に師匠が弟子にすることは、通り名を与えること。
 考えた末に、アルは彼に「ハル」という名をつけました。もともと、家でもそう呼ばれていたそうなので、本人もその呼び名でいいと言っていましたが、「捻りがないんじゃない?」とぼやいてアルに拳骨で殴られていました。
 でもね、「アル」と「ハル」って語感が似てるでしょう。きっとアルは、自分の弟子だから語感の近い通り名にしたんだと思います。ああ見えて、結構そういうところにはこだわるんですよね。
 
 今日は塔の案内と、新入りがこなす雑用についての説明で終わってしまいました。本格的な修行は明日からです。
 歓迎会ということで、今日の夕食は少しだけ豪華な献立になりました。私もニ、三品作りましたが、ハル君の口に合ったようで良かったです。
 塔の魔術士達も、新入りを概ね好意的に迎え入れたようで、まずは一安心ですわ。

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