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巡る季節
 永遠に続くかと思えた猛暑が、波が引くように鎮まっていき。気付けば朝晩に一枚上着を羽織るようになって、玄関の靴箱からはサンダルが消えた。
 流石にまだコートを出すには早すぎて、長袖のパーカーを着こんで外に出れば、庭木を見上げる文さんと鉢合わせて、思わず笑顔になる。
「お出かけですか?」
「うん。ちょっと郵便局にね」
 スニーカーの踵を直しつつ、彼女の視線の先を辿れば、そこには一枚だけ紅く染まった楓の葉。
「秋だね」
「秋、ですわ」
 気合の篭った返答。エア竹箒を握りしめ、決意に燃える瞳で楓の木を見つめる文さんは、すでに落ち葉との格闘を始める気満々だ。
 幾度も巡る季節。繰り返される挑戦。
 秋の訪れは、いつだって物悲しい。
Twitter300字SS」 第二十五回「訪れ」
 こちらは「落ち葉の季節」の前日譚になります(^^ゞ
 秋の訪れは、文さんにとって「果てなき戦い」の始まり。

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© 2018 seeds/小田島静流