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【魔術術】 概要
《魔神リィーム》
魔術について語るためには、まずその力の源である魔神リィームについて説明する必要があるでしょう。
ファーンを創造せし十一の神々。そのうちの一柱である魔神リィームについて詳しく知るものはそう多くありません。一般に魔神は魔術士達の崇める神であるという程度の認識しかされていないでしょう。
魔神リィームは、世界を巡り夜を照らす月を創りし神です。
十柱の神々がファーンの創造に取り掛かっていた頃、リィームは月を生み出し、そこに自らの力を満たしました。その後、ガイリアの力を借りて作り上げた「魔族」と呼ばれる生命体をそこに住まわせました。そして自らも、他の神々が住まう「天の神殿」から月へ移り住んだと言われています。
《魔術とは》
自然律を変化させ、世界を自分の意のままに従わせる術の総称です。
魔術を行使するには、《魔力》と呼ばれる特殊な力を先天的に備えていることが必要です。
また、魔術を効率よく行使するために開発された魔術用語《ルーン》が存在し、ほとんどの魔術士はこの《ルーン》を用いて魔術を行使します。
《魔力》
魔術を行使する際に必要な力です。先天的に備わるもので、修行等で身につけることは出来ません。
魔力は魔術を行使するごとに消費され、一定時間休息することで回復します。
《魔術士という存在》
地上に生まれし者の中には、生まれながらにしてその身に魔力を宿す者がいます。その力を意のままに振るうことの出来るもの。それが、魔術士と呼ばれる存在です。
なぜ魔術士が存在するのかについては諸説ありますが、こんな一説が今のところ有力視されています。
ファーンの世界を取り巻くように巡る輪廻の輪。そして、魔神リィームが作り出した月の軌道。この二つは決して接触しない位置にあるが、その輪が交差する地点が存在する。その輪廻の輪を巡る魂が、月の軌道と交差する地点で地上へと転生した場合、その魂に月の魔力が宿るのではないか……。
しかし実際のところは何も分かっていません。
魔力の量にはかなりの個人差があります。また、いかに膨大な魔力を備えていても、それを制御する力、そして魔術に関する専門的な知識を身につけていなければ、優れた魔術士とはいえません。故に彼らは日々研鑽を積み、自らを高めようとします。
魔力を持って生まれたものの中には、髪や瞳といった体の一部が紫色をしているものが多く存在します。かつて魔術士が異端の存在として恐れられていたころ、瞳が紫だった、髪の一房が紫だったというだけで魔術士扱いされ、非道な扱いを受けた人間もいたようです。
《魔法大国ルーン》
ファーン暦221年、北大陸に建国された魔法大国ルーンは、中央大陸からの移民団が作り上げた国家です。建国に際して、北大陸の厳しい気候に打ち勝つために集められた魔術士達が、最終的には権力の座に着いたという、極めて特殊な国家でした。
次第に魔術至上主義を掲げるようになったルーンは、魔術士を《選民》、それ以外を《平民》と区別し、平民を虐げるようになっていきました。
やがてルーンは北大陸だけでなくファーン全土を支配せんと勢力を伸ばし始め、ファーン復活暦3年には全世界を手中に収めました。
しかし、その魔法大国は、ファーン復活暦45年に謎の滅亡を遂げます。
強大な魔術により、首都だけでなくその周辺地域全てが一夜にして廃墟となり、そこに暮らしていた二十万人もの命が一瞬にして奪われました。
この滅亡の原因については詳しく分かっていませんが、滅亡直前に逃げ延びた一部の人々は、「一人の魔術士がルーンを滅ぼした」と伝えています。
この魔法大国ルーンの行った魔術による統治、そして一夜にして、強大な魔術による滅亡を遂げたという史実により、これ以降魔術士は恐怖の対象となってしまいました。特にルーン崩壊から百年ほどは、魔術士というだけで街を追われたり、命を狙われたりする時代が続いたと言われています。