おばけかぼちゃの灯りを頼りに
蜘蛛の巣のゲートを潜れば
そこは 人ならざるものの宴会場

合言葉は忘れてないかい?
大きな籠は持ったかい?

さあ、楽しんでおいで
今宵、時空の扉は開け放たれて
あの世とこの世を繋いでる

* * * * *

「おかし、おかし、ちょーだいっ!!」
「違うよ、おちびちゃん。『おかしか、いたずらか』だよ」
「いたずら、しないよ? おかし、ちょーだい♪」

ちびっこ怪獣が走り回れば
狼男が落としたお菓子を拾い歩き

「魔法も使えるようになればいいのになあ」
「使えるようにしてあげようか? この薬を飲めばたちどころに……」
「わー!! 先生、それまだ試作品ですっ!」

私服の魔女が おもちゃのステッキを玩べば
黒豹が怪しげな薬瓶を差し出し

「よぉし、あたしとアームレスリングして勝った人にお菓子をあげるよっ!」
「のぞむところだっ。いざ、尋常に勝負って、前が見えねえっ」

褐色の女海賊が腕まくりをすれば
ミイラ男が顔の包帯をむしりとり

「てめえ、今日が本番なんだからじっと飾り付けられてろよっ!」
『ヤナコッタ〜』
「あ、あの、今日くらいは自由に遊ばせてあげてくれませんか? いつもじっとしてろなんて可哀想ですよ」
「あんたがそうやって甘やかすからつけあがるんだよ!」

竹箒を竹光に代えて戦う侍と
カンフースーツの後ろに隠れるかぼちゃのジャック

「……ふ、今日くらいは大人しくしてやるかの」
「あー! 遊びに来てくれたの? やったあ、一緒に見て回ろっ!」
「ち、ちがうっ。私はただ、偵察に――」
「お嬢様、偵察と言ってしまっては偵察になりません……」

銀髪の妖精がそっぽを向けば
ツインテールの小悪魔がむぎゅっと抱きつき

「わあ、踊り子ですか? セクシーですねえ」
「……すーすーする」
「……いつもより露出度少ないんじゃないのか? それ」
「おっ、ねーちゃん踊れ踊れ〜☆」
「……踊る」
「わー、って、僕らもですか!?」
「みんなで」

いつしか始まる陽気なダンス
バラバラ ハチャメチャ それでも笑顔

* * * * *

「おや、向こうは賑やかだね」
「こっちも負けずに盛り上がっていきましょうか」
「静かに飲めると思ったんだがなあ」
「そうは問屋が卸さぬよ」

銀紙の月が照らす墓場では
司祭とおばけと魔女のダンス
おばけかぼちゃも加わって
いつしか空へと滑り出す

* * * * *


『cock-a-doodle-doo!』


夜明けを告げる鶏の声
朝日に照らされる前に
それぞれの場所へおかえりなさい

「それでは、これにて終了ー!」
「おやすみなさぁい」
「遅刻しちゃ駄目ですよー」



一人残ったかぼちゃのジャック

『フッ、今年モ逃ゲ切ッタゼ』

ろうそく尽きて また来年


「ここで寝るなー! 倉庫に戻ってからにしろっ!」


Fin.