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たったひとつのちいさなねがい
「ちくしょー、待てこらー!!」
『ツカマエラレルモンナラツカマエテミナー』
どどどどどどどど
ヒュンッ☆
「あっ、てめえっ!! 瞬間移動なんて真似まで覚えやがったのか!!あのドテカボシャ!!」
カツン
「ん? なんだこれ……」
「魔法の杖か。誰かの忘れモンか? 仕方ねえなあ」
てくてくてく
「しかし魔法使いって奴はいいよなあ、杖を一振りするだけでなんでも叶えちまって」
とことことこ
「俺にも魔法が使えたらなあ」
そうよ わたしは
ねがいをかなえるまほうのつえ
あなたのねがいはなあに?
「そうだなあ、例えば……あのカボチャ野郎をとっ捕まえて正門にふんじばるとか」
『ギャー! ヤメロー』
「人を見ると突進してくるあのチビドラゴンをどうにかして大人しくさせるとか」
『あれー? おとなになっちゃったー。もう、どーんってできませんね。ざんねん☆』
「やたらと研究室を爆発させるあの姐さんに、自分で部屋を掃除させるとか」
『ちょっと、なによこの格好! なんでわたしがメイド姿で掃除なんてしなきゃいけないのよー!!』
「学園長を開眼させるとか」
『ほほう……地獄が見たいようですね』
「なんだ、つまらないことしか思いつかねえなあ」
そんなことないとおもいますけど
あなたじしんのねがいはないのかしら?
「今、一番の望みは……そうだなあ」
そうよ わたしは
ねがいをかなえるまほうのつえ
どんなねがいも のぞみのまま
あなたがのぞむなら
せかいをはかいすることも
あらたにそうぞうすることも
なんでもおもいのまま
さあ、いってごらんなさい
あなたじしんの せつなるねがい
「明日の朝まで天気がもちますように、かな」
きらきらりーん☆
「あれ……なんか晴れてきたな」
「あー、いたいた! 用務員さん、見つけてくれたんすか!」
「なんだ使い走り、この杖はお前のか」
「そうっす。落としちゃって探してたんすよー。ありがとうございます」
「大切なもんだろ? もうなくすなよ」
「はいっす」
「さあて、ジャックの奴でも探しに行くか」
「あれ、ジャックなら正門に張り付いてたっすよ?」
「え?」
『チクショー、オロセー!!』
ふふふふふ
なんでも願いを叶えてくれる魔法の杖――。なんかものすごく適当に叶えている気もしますが(笑)
願ったのは、贅沢だけれどささやかな願い。おかげで快晴の空の下、楽しい一夜を過ごせたことでしょう。
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