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楽しいひとときを、君に
 店を開くと決めたのは、単に暇だったからだ。いや、これまでもずっと暇だったのだが、これからもずっと暇を持て余すことに一抹の不安を覚えたから、と言った方が正しいか。
 しかし、どうやら相談相手を間違えたようだ。貸店舗を探すだけのはずが、気づけば新たに店を建てる話が進んでおり、しかも出来上がった店にはどういうわけか台所や風呂までが整備されていた。
「台所なんて、あっても使わないのに」
「そりゃあ、君はろくに食べなくても支障ないんだろうけど、客に茶くらい出すだろう?」
 それにね、と灰色の賢者は片目を瞑る。
「君にもいつか、食事の楽しさが理解できる日が来るかもしれないからね」
「それはお得意の予言かい」
「希望、だよ」
Twitter300字ss」 第四十七回「食べる」
 「食べる」がテーマの今回でしたが、なぜか思いついたのがユージーンの過去話でした(^_^;)
 さんざんオルト君にご飯の催促をしているユージーンですが、実は彼ら『古の森人族』は仙人みたいな種族で、ろくに食事をしなくても平気だったりします。
 そんな彼の骨董店にきちんとした台所がしつらえてあるのは、ひとえに「暇なんでなにか店でも開こうと思うんだけどどう思う?」と相談した相手が、長期的運用を見据えて口を出したから、というお話(笑)
 しかし、結局のところ、一人でいる時はろくに台所を使わないので、折角の設備が埃を被っています……(>_<)
2018.10.06


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