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果ての窓辺から
 窓の外に広がるのは、どこまでも続く空。
 その名の通り『世界の果て』、天高く聳える塔から見る景色はさぞ絶景だろうと言われるが、実際のところはひたすらに『空』。それだけだ。
 朝も夜もない、ついでに雲一つない空。
 永遠に変わらないこの場所を『時の果ての監獄』などと呼ぶ者もいるらしい。
「これでいいのさ。私はもう、世界に関わらないと決めたんだから」
 『世界の果て』に塔を造り上げ、引きこもって幾星霜。変わらぬ景色に飽き果て、窓硝子には外界の景色を映すことにした。
 居間の窓には南の海、寝室の窓には遙かな夜空。
 そして書斎の窓には、ざわめく世界樹。
 古文書の頁をめくりながら、梢の囁きに耳を澄ます。
「うん。今日も楽しそうだ」
Twitter300字ss」 第五十九回「窓」
 《果ての塔》に引きこもり、外界を眺めて過ごしている《灰色の賢者》のお話。
 自ら引きこもったのに飽きる、というあたりが、業が深いというか何というか……。
 世界に関わらない、と嘯きつつ、外界の友人とはちょいちょい連絡を取っている様子。
2019.11.07


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