まったくもってついていない。魔術が暴走して足を怪我したばかりか、愛用の杖まで壊してしまった。
腕の良い魔術士ならば杖がなくとも支障ないのだろうが、いかんせん集中力に欠ける私にとって、補助道具である杖は必需品だ。仕事のためにも新調するしかない。
馴染みの魔術道具店へ駆け込み、間に合わせでいいから、と頼み込めば、訳知り顔の店主が出してきたのは――どこからどう見てもごく普通の青年。
「杖です。あなたを支えます。どうかそばに置いて下さい」
真顔で懇願されても困ってしまう。どういうことかと視線を投げかけるも、老獪な店主は澄まし顔で沈黙を貫いている。
「……それじゃあ、ひとまず肩を貸してもらえる?」
「よろこんで!」