ついこの間まで寒風が吹き荒れていたというのに、気がつけば花の季節が過ぎて、木々は日毎に青さを増していく。
遥か頭上に揺れる世界樹の枝もまた緑に染まり、陽の光を浴びて光り輝くようだ。
「いい季節になったねえ」
裏庭に寝転がり、木漏れ日に手を伸ばせば、爽やかな風が吹き抜けていく。
「こんな日は店に篭ってないで外に出ないとね」
「そういう理由で店を閉めるな!」
どこからともなく響いてきた怒声に、おやと顔を上げれば、板塀の向こうから覗く紺の帽子。自慢の翼を使えば塀などひとっとびだろうに、そうしないところが実に彼らしい。
「お仕事ご苦労さま~。手紙? 小包?」
「どっちもだ。さっさと店を開けやがれ、このぐうたらエルフ!」