[TOP] [HOME]

手料理
 《世界樹の街》の郵便配達員が暮らす独身寮《蜂の巣》には食堂がない。
 その代わり共同の厨房があって、誰でも自由に使っていいことになっているのだが、三食きっちり自炊するようなまめな者はおらず、ほとんどが外食で済ませてしまっている。
「外食ばっかりだと飽きるよなー」
「そう思うなら毎日同じ店に来るんじゃないよ」
 女将に小突かれて、ジャックは慌てて手を振った。
「いやいや、ここのミートパイは絶品だよ? だけど、たまには家庭料理が恋しくなるわけよ」
「贅沢だねえ、まったく」
 それなら、と隣の屋台を指差し、にやりと笑う女将。
「母ちゃんの手料理をせがめばいいだろ」
「あー、オルトー! 今日の夕飯作ってー!」
「誰が母ちゃんだ!」
Twitter300字ss」 第四十七回「食べる」
 オルトを含め、ほとんどの配達員は郵便局そばの独身寮で寝起きしているのですが、学校の寮ではないので食堂はありません。
 その代わり、広場に朝早くから軽食の屋台が出ていたり、広場周辺に夜までやっている食堂や酒場がたくさんあるので、食べるところには不自由しないのですが、たまには『自分のために作られた手料理』が食べたくなるというもので(^^ゞ
 ジャックはミートパイの屋台がお気に入りで毎日通っているようですが、オルトはあちこち渡り歩いて味の研究している模様です(^^ゞ
 オルトを「ママ」と呼ばせようか悩んで、結局「母ちゃん」にしました(笑)
 なお、独身寮の厨房は設備があまりよくないので、オルトは以前から不満を募らせており、そのせいもあって骨董店の(使われていない割にまともな設備が揃っている)台所を自由に使えるようになって、ちょっと楽しくなっている部分があるみたいです。
2018.10.06


[TOP] [HOME]