星を宿す樹
おやおや、この婆に何のご用かね?
なに? なぜ《星祭》という名前なのかって? それが気になって夜も眠れない?
それじゃあ、哀れな小鳥のために、特別に話してあげようかね。
古い――それはもう、気の遠くなるくらい昔から伝わるお話さ。
かつて――世界は終焉を迎えようとしていた。
大地は割れ、空は落ち、海は枯れ――沢山の命が失われた。
僅かに生き残った者達は、追い立てられるようにして、地の果てにそびえる巨木の根元へと集まった。
彼らは、目の前で崩れていく世界を、震えながら見つめることしか出来なかった。
巨木はそんな彼らを優しく抱きしめ、ひたすらに耐えた。
やがて、すべてが終わり、暗闇の中に巨木だけが残った。
永遠の夜に怯える者達を励ますように、巨木は虚空へと枝を伸ばし、瞬く星々の光をその身に宿した。
淡い光に照らされて、少しずつ笑顔を取り戻した彼らは、巨木の周囲に街を築いた。
そうして地上に灯が戻った頃、祭が始まった。
巨木に感謝を捧げる、ささやかな祭。
最初は片手で足りるほどだった参加者は年を追うごとに増え続け、やがて街全体を巻き込んだどんちゃん騒ぎへと発展していったのさ。
そういう謂れなら、《巨木祭》とか《世界樹祭》になるんじゃないかって?
それがねえ、やっこさんときたら目立つことが大の苦手で、そういう気恥ずかしい名前はよしてくれと、頑として首を縦に振らなかったそうだよ。
誰の話をしてるのかって?
なあに、《世界樹》の話さ。