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prologue
「オルト君、キミ異動ね」
 横長の瞳で見つめられて、ぶるると翼を打ち震わせる。
「なんでですか、局長! オレ、何かやらかしましたか!?」
「違うよ、急な欠員が出たの。という訳でキミ、来月から十二番街の《黄昏通り》担当ね」
「十二番街!?」
 常緑の巨木を中心に、渦巻き状に連なる《世界樹の街》。そして十二番街は巨木の根元にある最奥の街だ。
「めちゃくちゃ遠いとこじゃないですか!」
 抗議の声を聞き流し、問答無用とばかりに辞令を押しつけて、局長はすい、と目を細めた。
「キミの翼なら一飛びだろう」
 実直な彼はお世辞など言わない。だからこれは、純然たる事実を述べているだけなのだろう。
「左遷じゃないから安心して」
「ほんとかよ!」


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