[TOP] [HOME]

海へ
「海へ行こうよ」
 唐突な言葉に、思わず調理の手が止まる。
「急に何を言い出した?」
「だって、夏と言えば海でしょ」
「まだ夏じゃないぞ」
 このところ真夏を思わせる気温が続いているが、本格的な夏の到来は一月以上先だ。
「夏の連休の話だよ。たまには夏らしいことをしてみようかと思って。三番街なら日帰りできるし、泊りがけでもいいね」
 意外すぎる言葉に目を剥けば、ほらさ、と頬を掻く。
「君が見ていた海を、僕も見てみたいと思って」
 照れくさい台詞だが、驚くべきはそこじゃない。
(故郷の話なんてしたことなんかあったか?)
「楽しみだなー。浜辺で昼寝」
「遊びに行くんじゃないのかよ!」
「楽しみなのです!」
 無邪気にはしゃぐ看板娘は、もう水着の算段を始めている。

 ブログの整理をしていたら書きかけで放置されていたこれを見つけたので(^_^;)
 保存されていた日付から、恐らく2018年5月のtwitter300字SS・第四十二回「遊ぶ」に出すために書いたものだと推測。
 300字をオーバーしていたので、削れなくて頓挫したまま没になり、別の作品を提出。そして、書きかけのこちらをすっかり忘れていた模様です(^_^;)

 ユージーンは「そらとぶゆめ」で、オルトが見た「故郷の海の話」を聞いているのですが、オルトは覚えてないので(^_^;)
2021.03.10


[TOP] [HOME]