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渡り鳥

〜十の月のツバメ〜
《gilders》☆☆☆
 
36 etude 12:「渡り鳥」


晴れ渡った空に、一羽のツバメ
群れからはぐれたか それとも見捨てられたか
切ない鳴き声が胸にしみる

黒い小さな渡り鳥
どこから来て どこへ行くのか
何を目当てに 世界を渡り
何を夢見て 飛び続けるのか

「迎えが来たね」
そんな声に見上げれば、高い空に二羽のツバメ
鋭い鳴き声は 叱咤の声か
軽やかに飛び去るその先には
大勢の仲間が待っているのだろう

そうして 空と海とを渡り
眩い未来へと、迷いなく進み続ける

「まるでわたしらみたいだね」
陽光に手をかざし、彼女は笑う
「あっちこっちふらふらと、まるで渡り鳥みたいだろ?」

あちこちの大陸を巡り、幾つもの街を渡って
ただ一つの目的のために、歩き続ける

「それで、次はどこへ行くの?」
幾度となく繰り返した問いかけに
睨めっこしていた地図を投げ出し
彼女の白い指は 大空を指す
「あのツバメ達を追いかけて行くとしようか」

羅針盤の上を 影が躍る
黒い小さな渡り鳥
彼らが向かう先は、南――

「南大陸は、きっと暖かいよ」
寒がりの彼女らしい提案に、そうだねと頷いて
「さあ、出発だ!」
「わっ、待ってよリダってばー!」

遥かな南の地には、何が待っているのだろう
どんな出会いが、待っているのだろう――


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