VR世界《EDEN》にも秋が来た。木々は赤や黄色に染まり、澄み渡る空には赤とんぼが舞う。
絶景スポットは各所にあるが、なかでもこの《YAMATO》サーバは格別だ。夕焼けに染まる寺院を見ながら季節限定メニューに舌鼓を打つ、なんて贅沢も、比較的簡単に叶ってしまう。
「栗ご飯にしようかなあ、それとも秋刀魚、松茸……うーん、迷う!」
「ゆっくり考えなよ」
悩み続ける彼女にメニューを渡し、窓の外に広がる景色に目を細める。
「勿体ないよなあ、もうここでしか、この光景を楽しめないなんて」
現実世界から四季が失われたのは半世紀も前のこと。今は極寒の冬と灼熱の夏。その繰り返しだ。
本物を知らない僕達は、作られた秋を堪能する。
「Twitter300字ss」 第四十六回「秋」
解説
つい先日、友人と「東京にはもう、春と秋はなくなったんだよ! 十月まで夏で、十一月からは冬!」という話をしたばかりでして(^_^;)
春も短くなりましたが、秋はそれに輪をかけて短くなってしまった感が否めませんね。
美しく、そして美味しい「秋」を、せめてヴァーチャル世界で楽しめればいいな、と思い、こんな話を書いてみました。(つい先日、映画「レディー・プレイヤー1」を見た影響も多々ありますw)
きっとここではちゃんと味覚も再現されていて、美味しいご飯が食べられるんだと思います♪
サイト初出:2018.09.01