watch
超空間航行中の航海当直は、正直言って暇だ。
自動操縦なので、コンソールに触れる必要すらない。ただ「そこにいればいいだけ」の形骸化した当番故に、ある程度の自由行動は黙認されている。いるのだが――。
「ちょっと！ 何をしているんですか、イサオくん！」
扉から漏れ聞こえる爆音に、すわ緊急事態かと艦橋へ駆け込んだ船長の目に映ったのは、メインモニタに映し出された往年のＳＦ映画。
「何って、見ての通り、映画上映会ですけど？」
人工要塞の爆破に成功し、宇宙空間へ脱出する小型艇。華やかなラストシーン、そして盛り上がるＢＧＭ――は無情にもカットされ、怒りに燃える船長の説教タイムは、エンドロールが終わってもなお続いたという。
「Twitter300字SS」 第六十六回「橋」
今回のお題説明文に「つり橋、船橋、橋渡し等「橋」の入る言葉、比喩的表現でもOKです。」とあって、この「船橋」をまず地名の「ふなばし」と読んだ後に、「もしかして「船橋（せんきょう）」の方かな？」と思ったら、こんなお話が思い浮かびました。
「ブリッジ」といえば船の指揮所を指すブリッジ（船橋・艦橋）ですよね！ ということで。
テランセラ号ブリッジのメインモニタはかなり大きいので、あれで映画を見たら迫力あるだろうなーと思ったら、こんなことに。この時代、むしろVRの没入型ムービーが多いでしょうから、2D映画を大画面で見るのは逆に新鮮なのかも。
ちなみに、文中には出てきてませんが、イサオ以外にも観客が数名いた模様。まとめてお説教ですね。
なお、タイトルの「watch」は「映画を視聴する」の「ウォッチ」と「航海当直」の「ワッチ」をかけております(^-^)
（2020.07.06 追記；初稿が「艦長」になっていたので「船長」に直しました。あとちょっと分かりづらかった部分を一部直しています）
2020.07.04