この雨に、誰しも考えることは同じようで
「最後の一本だったね! はい、これ」
にゅっと差し出されたのは、黄色いビニール傘
「……濡れて帰ります」
「何言ってんの、風邪引いちゃうよー。はい、レジ行こう~♪」
「ちょ、まっ――」
ちゃっちゃとレジに向かうケイさんの
コートの右肩はびしょぬれで
それでもなんだか楽しそうな横顔を見たら
文句は自然と 引っ込んだ
「わーい、お揃いだね」
「……この歳でベアルック……いたい、いたすぎる……」
「えー? どっか怪我した?」
「や、そーじゃなくて」
やけくそで 水溜りを蹴飛ばせば
「わたしも~!」
萌黄色の長靴が 水溜りを踏んで踊る
「わっ、かかったよケイさん」
「あは、ごっめーん」
どしゃぶりの雨の中
跳ねて踊る 僕たちは
きっと 端から見たのなら
雨空に咲く 2本のたんぽぽ
綿毛になって飛ぶ前に
帰り着ければいいけれど