魔術士は黒衣、と決めつけられがちだが、実際のところ「魔術士の服は黒」などという決まりはない。
実際、《塔》に集う魔術士達はみな好きな色の長衣を着ているし、魔術士然とした長衣すら嫌がって、普段着で研究に励んでいる者もいる。
「そういや、ししょーは黒ばっか着てるっすね。そういう伝統とか形式とか、一番嫌がりそうなのに」
弟子の言葉に『北の魔女』はふふん、と鼻を鳴らしてみせた。
「これが一番、理に適ってるのよ」
プシュー! ボワワン!
相槌を打つように、大釜から立ちのぼる七色の煙。
「げっ……!」
まだらに染まった白衣を恨めしく見下ろす弟子の横で、黒衣の魔女は澄まし顔。
「ね?」
「ね、じゃないっすよ! 早く洗わないとー!」