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秘密の庭
 茨に守られた扉の向こう、光溢れる小さな庭で、今年も君は泥だらけになって笑う。
 水溜まりに映るその眩い笑顔は、僕だけの宝物。
「ねえ、かくれんぼしましょ」
「ダメだよ、まだ剪定が終わってないんだから」
「今日は私と遊ぶ約束でしょ」
 二人だけの秘密の庭で、短い夏を謳歌するように、はしゃいで、笑って。
「――陛下。お時間です」
 無情に告げられる、夏の終わり。
「分かった。今行く」
 無邪気な笑顔が、パリンと割れる音がした。
 水溜まりを踏みしめて、若き女王が庭を去る。振り返ることなく、ただ真っ直ぐに。
「また、来年」
 そう囁く君が今どんな顔をしているのか、僕には分からないけれど。
 君との約束を果たすため、僕はこの庭を守り続ける。
 こちらは第4回 Text-Revolutions内有志企画「300字SSポストカードラリー」参加作品。
 三回目となる今回のお題は「鏡」でした。
 鏡と聞いて、なぜか最初に「水たまりに映る笑顔」が思いついて、そこから生まれたお話です。
 文中にはまともに説明が出てきませんが、テキレボwebカタログならびに企画サイトさんへ送った説明文には

「北国に君臨する若き女王と、その幼馴染である園丁のお話」

と書かせていただきました(^^ゞ
 お話の舞台は「でんたま」シリーズでお馴染みのローラ国……ではなく、荒野を挟んでお隣の国「ライラ国」。
 もっと詳しい舞台背景は「金冠鳥の囁き」でなんとか説明したつもりですので、ぜひそちらをご覧くださいm(__)m
2016.10.13


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