+後書き+


 「calling 〜冬枯れの森にて君を呼ぶ〜」、お楽しみいただけましたか?
 昨年に引き続き、「番外編競作」への参加作品として書いたこちらの小説ですが、実は一年ほど前に八割方を書き上げたものの、最後で行き詰ってお蔵入りしていた作品だったりします(^_^;)
 その時は本編の半年前ではなく、卵が孵る少し前の話として描いていました。そして、アイシャが頼みごとをする相手は旅人ではなくラウルだったんです。
 ただ、頼みごとの内容が「外伝1」と被っていたために、同じことを書くのもつまらないな、と思い立ち、今回続きを執筆するに当たって全般的な内容の見直しをしました。結果、時期を半年前に移し、三人組をより前面に押し出す形となりました。
 
 番外編競作2のテーマは「禁じられた言葉」。このテーマに決まった時、正直言って「話が思いつかないっ!」と匙を投げかけ、それでも何とか、幾つかのプロットを練ってみたのですが、どれも今ひとつ。
 今回は書き手としての参加は無理かなあ、と諦めかけた時、ふと執筆途中で詰まってしまった話を思い出し、ファイルの奥底から書きかけの作品を引っ張り出して、読み直してみました。
 いくつか変更しなければいけない点はあるけれど、これならいけるかもしれない。そう思って執筆を再開してみたら、思いのほか筆が乗りまして。
 一度頓挫してしまった作品というのは、再び書き出すまでにかなりのエネルギーを必要とするものなのですが、この作品に限っては、テーマに絡めて話を再構築した途端、あっさり書き上げることが出来ました。やはり、作品にも「時機」というものがあるようです。

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 さて、作中での「禁じられた言葉」はつまり「名前」だったわけですが、実はこの「精霊使いは名前をみだりに口にしない」という設定は、アイシャというキャラクターが確立されていく過程で生まれたものです。
 いつも無口で無愛想なアイシャだから、人を呼ぶ時も名前なんか呼んだりしないんじゃないかな、と思ってそう描写したのですが、後からこの設定を思いついて、これ幸いと採用してみたわけです(^^ゞ
 さて、そんなアイシャですが、この一件があってからも長年の習慣はそうそう抜けないらしく、滅多に人の名を口にすることはないようです。
 そして、この設定を踏まえ、後に卵から孵った光の竜ルフィーリは「チビ」「おチビちゃん」などと呼び表されることになります。しかし当の本人は全く気にせずに、自分の名を連呼するわ他人の名を呼びまくるわで、アイシャも頭が痛いのではないかと(笑)

2004.06.16 seeds

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