lost child

[公園]

 道なりに進むと、ぽっかりと開けた空間に出た。
 どうやら公園らしいそこはやはり無人で、鳩が呑気に石畳をつついている。
 ちょうどいいから少し休もう。おあつらえ向きに、少し離れた花壇の側に長椅子がある。
 しかし、そこには先客がいた。
 日当たりの良い長椅子に腰掛け、こっくりこっくり舟を漕いでいるのは、年の頃七十を過ぎたくらいの老人だった。雪のように白い頭と長い髭。だぶだぶの長衣に身を包み、杖を手に居眠りをしている姿は、まるで魔法使いのようだ。
 別の椅子を探そう。そう思ってそっと老人の前を通り過ぎる。と、硬く閉じられていたはずの瞳がくわっと見開かれ、さっと振るわれた杖に足をすくわれた。
「ってえ! 何しやがるんだ、このじじいっ!!」
 剥き出しの地面にすっ転がりそうになり、思わずそう怒鳴りつけると、老人は負けじと大音量で言い返してきた。
「貴様、話の途中で居眠りするとは何事じゃ! いいか、もう一度最初から話してやるから今度こそきちんと聞くんじゃぞ!」
 そう言って、滔々と語り出したのは、どうやら大祭の由来のようだ。人違いだと言おうにも、あまりにも淀みないその解説に、割り込む隙がまるでない。
 こうなったら仕方ない。気が済むまで聞いてやるしかなさそうだ。

「……というわけなんじゃ、分かったかの? お若いの」
「分かった分かった」
 やる気のない答えに満足そうに頷いて、老人は再び瞼を閉じた。そしてそのまま、ぐーぐーと寝息を立て始める。
「……もしかして、今までの全部、寝言か?」 
 だとしたら、随分とまあ傍迷惑な寝言である。
 老人が再び起きて同じことを繰り返さないうちに、この場を離れた方が良さそうだ。
 見れば、生垣の向こうに道が続いている。その先はどうやら商店街のようだ。飲食店があるのか、何やらいい匂いが漂ってくる。
 そう言えば、昼飯を食い損ねたんだった。
 途端に空腹感が募って、腹をぐっと押さえる。あそこに行けば、何か食べられるだろうか。

商店街へ向かう